仕事や勉強の効率を上げようと、作業用BGMを流す人は少なくありません。しかし、音楽はときに短期記憶を妨げる要因になります。一方で、慣れた作業では「116BPM(1分間に打たれるビート数)」のテンポの音楽が集中力と生産性を高めることが分かっています。話題の動画「50歳でも記憶力はアップ!加齢に勝てる脳トレ法」を公開した池田義博氏は、日本記憶力選手権大会で6回優勝。試験・資格・英語・ビジネスなど、あらゆる場面で結果を出すためのメソッドを紹介します。
※本稿は、著書「世界記憶力グランドマスターが教える脳にまかせる勉強法」の一部を抜粋しました。
作業用BGMは、短期記憶の妨げになることも
私は仕事中や勉強中、記憶競技の練習のときもまったく音楽をかけません。かけないどころか、ノイズを完全にシャットアウトするヘッドホンをつけているぐらいです。
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個人的には、集中時の無音にこだわっているのですが、それには音響心理学が関係しています。
「音楽によって作業中の短期記憶が妨害されてしまう」という現象があるからなのです。
短期記憶とは数秒から数分ぐらいのあいだ、保持できる記憶のことですが、ほとんどの知的作業で、この機能は使われます。
たとえば、読書なども直前の情報が頭に残っているため、続けて理解しながら読み進めることができますし、仕事の資料作りにおいても、記憶そのものが必要な勉強のときなども、短期記憶が中心になって機能しています。
その影響を考えると、やはり知的作業時には音楽はかけないほうがいいのです。
ただし、作業に入る前であれば利用価値はあります。
自分にとって好きな音楽は、脳のやる気を起こす場所を刺激します。ここが刺激されると、ドーパミンという神経伝達物質が出て、やる気が生まれるのです。
そこで知的作業を行う直前まで好きな音楽を聴き、集中力を高めた状態で作業にとりかかるのです。スポーツ選手などが競技の直前まで音楽を聴いているのも、この効果を期待してのことでしょう。
慣れた作業なら、「116BPM」の音楽が生産性を上げてくれる
しかし、なかには作業中でもBGMが効率を上げてくれることがあります。
それは、これまで何度も行ってきて、慣れている課題をするときです。何度も繰り返して行ってきたことで、深く考えなくても脳が自動的に処理してくれるのです。
こういう状況では、音楽を聞くことで集中力が高まるため、ミスが減り生産性が上がるそうです。そして、流すのに適しているのが「116BPM」の音楽です。
BPMとは、テンポを表す単位で、1分間に打たれるビートの数、拍数を示しています。つまり、116BPMの音楽とは1分間に116拍のリズムを持つ音楽というわけです。
116BPM付近の有名な曲にマイケル・ジャクソンの「ビリー・ジーン」があります。
今では、インターネットで116BPMの曲が検索できますし、BPMから曲を選択できる音楽アプリもあるようなので、必要な方は調べてみてはいかがでしょうか。








