現実を受け入れて、新しい世界を生きていく覚悟を決めましょう。
どうせ、人間は必ず死ぬんです。みんな死ぬんだからあきらめることも肝心です。みじめに置いてけぼりにされた。ひとり遺されたなどと考える必要はありません。開き直ることも重要だと思います。
こう考えてください。ひとりになったということは、思い通りの人生が歩めるということです。解放されたといってもいいでしょう。清々した。そう感じる人もいるくらいです。ひとりを恐れる必要はないと、考えかたを変えてしまうのです。
自分を束縛するものからどんどん抜け出して、自由に生きる。嫌なこと、我慢しなければいけないことはもう何もないと考えると、気持ちに余裕が生まれて、楽になります。楽になると、ひとりぼっちが気にならなくなるのです。
これからは、やっと自分のために生きられるようになったのです。人間にとってこれほどの幸せはありません。
喪失に立ち向かうため
大切なこと
大切な人が亡くなったとき、心にぽっかり穴があいたような喪失感が生まれます。
喪失体験には急性期と慢性期があります。四十九日までは、心が落ち着かず、悲しみに暮れてしまうのは仕方がないことです。それでも、ほとんどの人は立ち直っていきます。
私が現時点で診ている女性の患者さんの話をしましょう。もともと老人性のうつ(編集部注:65歳以上の高齢者が発症するうつ病)のある方でしたが、夫を亡くしてしまってから、状態が非常に悪くなってしまいました。
さすがの私も「これ、本当によくなるのかな」、そんな不安が胸をよぎるほどだったので、どれほどひどい状態だったのか、お察しください。
女性は、まったく何もしなくなり、外にも1歩も出られなくなってしまいました。それでも、きちんと薬を出し、生活のアドバイスを続けていたら、あるとき、霧が晴れたかのように、急によくなったのです。
今は、二世帯住宅にするため、家を建て替えたり、旅行を楽しんだりしています。夫を亡くす前より元気な状態だといえます。これが現実です。
人が死を受け入れるまでには、否認→怒り→取引→抑うつ→受容という5つの心理的段階を踏むといわれています。インターネットなどで調べると、こう書かれていることでしょう。概ね、この通りです。
しかし、だからといって、悲しみに備えてびくびくと策を練るようなことは、私は必要ないと思っています。