
自己肯定感は高くないとダメなのだろうか――。欧米諸国と比べて、日本の若者の自己肯定感が低いというデータがあるが、そもそも、自己肯定感とはどのようなものなのか、どのように測定されるのかなど、知らないことは多い。本稿では、自己肯定感を測定する10の項目を紹介する。
自尊感情はこのように測定される
自己肯定感という言葉が世間に広まり、自分は自己肯定感が低いと気にしたり、何とかして自己肯定感を高めないといけないと思ったりしている人も、自己肯定感がどのようなものなのか、どのように測定されるのかを知らないことが多い。
日本の若者は自己肯定感が低いから問題だ、日本の若者の自己肯定感を欧米のように高めないといけないと論じている人たちも、自己肯定感がどのように測定されているのかを知らないのではないかと疑いたくなる。なぜなら、そうした論点があまりにも的外れだからだ。
そこで、自己肯定感がどのように測定されているのかを確認しておきたい。
自己肯定感という言葉が使われるようになったのは、ごく最近のことであって、十数年前までは自尊感情という用語のもとに研究が行われてきたので、まずは自尊感情の測定法についてみていくことにしたい。
心理学の世界において、自尊感情を測定する心理尺度として、最も多く使われてきたのが、10項目からなるローゼンバーグの自尊感情尺度である。それにはいくつかの翻訳があるが、自己に関する研究活動を一緒にさせていただいた故星野命(ほしのあきら)先生の翻訳版は、ローゼンバーグの自尊感情尺度を広めるのに大きく貢献した。それは、つぎのような項目で構成されている。
1.私はすべての点で自分に満足している
2.私は時々、自分がてんでだめだと思う
3.私は、自分にはいくつか見どころがあると思っている
4.私はたいていの人がやれる程度には物事ができる
5.私にはあまり得意に思うところがない
6.私は時々たしかに自分が役立たずだと感じる
7.私は少なくとも自分が他人と同じレベルに立つだけの価値がある人だと思う
8.もう少し自分を尊敬できたらばと思う
9.どんなときでも例外なく自分も失敗者だと思いがちだ
10.私は自身に対して前向きの態度をとっている
このうち、2、5、6、8、9は逆転項目といって、「あてはまらない」と答えた場合に自尊感情得点が高くなる。つまり、項目1、3、4、7、10は、あてはまれば自尊感情得点は高くなり、あてはまらなければ自尊感情億点は低くなる。反対に、項目2、5、6、8、9は、あてはまれば自尊感情得点は低くなり、あてはまらなければ自尊感情得点は高くなる。
ここまでの解説を読んでも、自己肯定感がどういうものなのか、今ひとつ実感が湧かないという人も少なくないはずだ。そのような人も、これらの項目を見ながら、自分はどうなのだろう、身近なあの人はどうなのだろう、などと考えてみることで、自己肯定感が高いとか低いとかいうのがどういうことなのか、少しは実感が湧いてくるのではないだろうか。