感じがいい人はメールの最後になにを書くのか?
20万部のベストセラー、200冊の書籍を手がけてきた編集者・庄子錬氏。NewsPicks、noteで大バズりした「感じのいい人」の文章術を書き下ろした書籍『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』(ダイヤモンド社)を上梓しました。
実は、周囲から「仕事ができる」「印象がいい」「信頼できる」と思われている人の文章には、ある共通点があります。本書では、1000人の調査と著者の10年以上にわたる編集経験から、「いまの時代に求められる、どんなシーンでも感じよく伝わる書き方」をわかりやすくお伝えしています。

厳しい指摘をするとき、「感じのいい人」はメールの最後に何を書く?Photo: Adobe Stock

メールの最後は「プラスアルファ」するくらいが、ちょうどいい

こちらの記事では、メールやチャットにおける「締めくくり」の重要性を解説しました。

さて、「締めくくり」にはどんなことを書けばいいのでしょうか。

まず押さえておきたいのが「型」です。

型とは「このかたちをマネすると伝わりやすくなりますよ」というテンプレートのこと。たとえば「PREP法」がその代表例です。PREP法とは、Point(結論)、Reason(理由)、Example(例)、Point(結論)の略です。

たとえば、こういった伝え方ですね。

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P(結論):このままでは目標達成は難しいと思います。
R(理由):現在の進捗は、予定の60%に留まっています。残り期間での挽回は厳しいのではないでしょうか。
E(例):先月の数字と比較しても、1週間あたりの件数は半分です。
P(結論):計画の見直しが必要だと考えます。よろしくお願いします。
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でも、こんなメールが上司から届いたらどう感じるでしょうか。

たしかに、現状の課題は端的に説明されていますし、計画の見直しが必要なこともわかる。間違ったことは書かれておらず、正論ではある。

でも一方で、ドライな印象も受けないでしょうか。淡々と詰められている感じ。有無を言わさぬ静かなプレッシャー。逃げ場のない残業の確定演出。ぼくも読んで胸がぎゅっと苦しくなりました。

もし現況に危機感をもちつつ、前向きに計画を見直してもらいたいなら、最後にあと一言ほしいところです。

そこでおすすめしたいのが「型プラス」という考え方です。

たとえば今回の場合、「よろしくお願いします」の前に、次の要素のどれかを追加してみます。

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1 Hearing(耳を傾ける):とはいえ、いろいろご意見があると思うので、次回の定例会議の冒頭でみなさんの考えを聞かせていただけませんか。
2 Action(行動を促す):一緒に知恵を出し合って、実現可能な計画にしていきましょう。
3 Future(未来を見せる):この見直しを通じて、より実現可能性の高い計画になると確信しています。
4 Help(助けを求める):忙しいとは思いますが、みなさんの協力が必要です。
5 Real(本音を言う):計画の見直しは一時的な後退かもしれません。ですが今このタイミングで立ち止まり、全員で考え直すからこそ、成果につながると信じています。
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どうでしょう。
こういった一言があるだけでも、ドライで辛辣な印象はぐっと減らせそうですよね。相手も少しは前向きにとらえてくれるのではないでしょうか。

とくに厳しいことを伝えなくちゃいけないときや、主張、提案、説得、依頼をするときは、いつもの締めくくりにプラスアルファする。「追伸」として書くのもいいでしょう。それでちょうど伝わるくらいになります。

送信する前、提出する前、3秒だけ立ち止まって、締めくくりを読み返してみてください。
たった3秒の思いやりが、厳しい正論を、温かなメッセージへと変えてくれるはずです。

庄子 錬(しょうじ・れん)
1988年東京都生まれ。編集者。経営者専門の出版プロデューサー。株式会社エニーソウル代表取締役。手がけた本は200冊以上、『バナナの魅力を100文字で伝えてください』(22万部)など10万部以上のベストセラーを多数担当。編集プロダクションでのギャル誌編集からキャリアをスタート。その後、出版社2社で書籍編集に従事したのち、PwC Japan合同会社に転じてコンテンツマーケティングを担当。2024年に独立。NewsPicksとnoteで文章術をテーマに発信し、NewsPicksでは「2024年、読者から最も支持を集めたトピックス記事」第1位、noteでは「今年、編集部で話題になった記事10選」に選ばれた。企業向けのライティング・編集研修も手がける。趣味はジャズ・ブルーズギター、海外旅行(40カ国)、バスケットボール観戦。

※この連載では、『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』庄子 錬(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集して掲載します。