「キョロキョロ感」こそが最強の対人スキル
20万部のベストセラー、200冊の書籍を手がけてきた編集者・庄子錬氏。NewsPicks、noteで大バズりした「感じのいい人」の文章術を書き下ろした書籍『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』(ダイヤモンド社)を上梓しました。
実は、周囲から「仕事ができる」「印象がいい」「信頼できる」と思われている人の文章には、ある共通点があります。本書では、1000人の調査と著者の10年以上にわたる編集経験から、「いまの時代に求められる、どんなシーンでも感じよく伝わる書き方」をわかりやすくお伝えしています。

なぜか好かれる人が無意識に実践している「たった1つの戦略」とは?Photo: Adobe Stock

「キョロキョロ感」を出すときの基本的な考え方

前回記事でこのように書きました。

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キョロキョロは忌み嫌うものではなく、むしろ学びを加速するのに有効である。
そして、日本人全般に当てはまる特性と仮定するなら、キョロキョロ感を意識的にかもし出すことで、「やる気」や「頑張り」が伝わり、相手はあなたに好印象を抱くのではないか。
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では、このキョロキョロ感を文章でどう表現すればいいのでしょうか。

具体的な話の前に、キョロキョロについてもう少し考えを深めていきましょう。

キョロキョロという言葉はどちらかというと、これまでネガティブな意味合いで使われてきましたし、いまも使われています。残念なことに。
でもとらえ方を変えると、こう表現できると思うんです。

キョロキョロ = 自分以外のことを気にかけている証

新入社員の頃を思い出してください。上司や先輩に「この理解で合ってますか?」と確認するシーンが多々あったはずですが、それは単に自信がないからだけじゃないですよね。正しい知識を身につけたい。相手の時間をムダにしたくない。自分ひとりで仕事を進められるようになりたい。そういう気持ちもあるから確認するわけです。

つまりキョロキョロは、「不安の表れ」ではなく「他者や仕事への真摯な態度」とも言い換えられます。

書くときなら「この言い方、どう伝わるかな?」「もっといい表現ないかな」と考えながら書く。期待どおりに伝わらなかったとしても、表現を変えたりしてなんとか伝えようとする。

そうやって少しずつ少しずつ自分の文章の幅を広げて「こういう人(場面)だと、こう書けばいいのか」と経験を蓄積していく。

そしてそういう姿勢や、適応、成長した痕跡が文章の端々に表れた結果として、相手は「この人、印象がいいな」と感じる。こういうプロセスだと思うんです。

つまり意識的にせよ無意識にせよ、印象がいいと思われている人って、キョロキョロの数を増やすのと同時に、キョロキョロからの自己成長をうまくアピールしている。そんなふうに言えるのではないでしょうか。

ただ、じゃあとにかくキョロキョロすればいいかというと、もちろんそんなことはなくて。相手との関係性、シチュエーション、テーマなどによって、適切なキョロキョロ度合いは変わってきます。マニュアルどおりにやろうとすると、かえって不自然になってしまい、悪い印象を与えることもあります。

そういう意味で大事なのは、まずは3つの基本を意識することです。

●使う相手を選ぶ
初めて話す人なのか、日常的にやりとりしている人なのか。自分と似たタイプの人か、それとも感性がまったく違いそうな人なのか。そうしたことによって柔軟に調整する。

●場面によって強弱をつける
大切な提案のときと日常的な報告のときでは、キョロキョロ度合いを変える。

●言いたいことはちゃんと言う
相手の反応を気にしすぎて、伝えたいことがぼやけてしまうのは本末転倒。

ビジネスコミュニケーションの基礎中の基礎ですけど、やっぱりこの3つは大切だと思います。

庄子 錬(しょうじ・れん)
1988年東京都生まれ。編集者。経営者専門の出版プロデューサー。株式会社エニーソウル代表取締役。手がけた本は200冊以上、『バナナの魅力を100文字で伝えてください』(22万部)など10万部以上のベストセラーを多数担当。編集プロダクションでのギャル誌編集からキャリアをスタート。その後、出版社2社で書籍編集に従事したのち、PwC Japan合同会社に転じてコンテンツマーケティングを担当。2024年に独立。NewsPicksとnoteで文章術をテーマに発信し、NewsPicksでは「2024年、読者から最も支持を集めたトピックス記事」第1位、noteでは「今年、編集部で話題になった記事10選」に選ばれた。企業向けのライティング・編集研修も手がける。趣味はジャズ・ブルーズギター、海外旅行(40カ国)、バスケットボール観戦。

※この連載では、『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』庄子 錬(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集して掲載します。