飽和脂肪は一般に不健康だと思われており、わたしの患者にも、ほかのどの食品とも同じく、過剰摂取を控えるようすすめています。飽和脂肪は長年、心臓病の要因と考えられてきた歴史があり、心臓発作やそのほかの心血管疾患のリスクを減らすためには、可能な限りとらないようにと言われてきました。

 実際、飽和脂肪の多い食事のせいでコレステロール値が上がり、メタボリックシンドロームになるというのはよくある話です。メタボリックシンドロームは2型糖尿病などの代謝性疾患につながる危険因子です。加えて、飽和脂肪をとることが、不安の増幅や、不安症を引き起こす神経炎症などの疾患につながるとする研究もあります。

 しかし飽和脂肪は現在、栄養学の研究において非常に大きな論争を巻き起こしています。長年、飽和脂肪はできる限りとらないほうがいいとされてきましたが、いまは思っていたほど有害ではないかもしれないとする研究が出てきています。

 2020年の画期的な研究で、米国心臓病学会誌は、全脂肪乳製品、未加工肉、ダークチョコレートに含まれる飽和脂肪は心臓病のリスクに影響がなく、むしろ脳卒中などの病気を予防できる可能性があると結論づけました。

 これらの研究結果が、不安症などの精神疾患にどう関係してくるかは、今後の研究次第ですが、飽和脂肪がこれまで必要以上に攻撃されてきたことがだんだん明らかになってきました。

 飽和脂肪に関する最新の文献を見直してから、わたしは、全脂肪乳製品、バター、倫理的に飼育された牛肉を適度にとることを推奨するようにしています。これらの食品は、タンパク質だけでなくビタミンやミネラルも豊富に含んでいますから、飽和脂肪に関するガイドラインが変更されたことで、適量なら食事にとり入れる価値が生まれたのです。