大きくなった体を維持するために
心臓にも血管にも余計な負荷がかかる

 肥満が認知症の危険因子となることはすでにお話ししたとおりです(編集部注/肥満のほうが適正体重者より2.44倍認知症を発症しやすいことが国立台湾大学の研究で明らかになっている)。BMI(編集部注/肥満度を測る数値。体重kgを身長mの2乗で割ることで求められる。BMI22が標準で、25を超えると肥満とされる)などを目安に、適正体重を維持することも大事な心がけです。

 数字を見れば肥満体型であるのが明らかでも、「やせようと思ってもなかなかダイエットが続かない」という人は多いかもしれません。ただし、肥満自体が生活習慣病の1つなので、大きな問題が表面化していないとしても体の中は「血管がボロボロで、血液がドロドロで、血流が悪い」状態になっている可能性は高いと言えます。内臓脂肪から出る炎症物質によって血管が傷つき、動脈硬化を進ませることもわかっています。

 若い頃より大幅に体重が増えたのだとしたら、脳への血流が滞っている危険もあります。より大きくなった体に血液を流そうにも、心臓の働きは同じか、年を重ねたぶんむしろパワーダウンしているのですから当然です。必死の働きである程度までは持ち堪えられたとしても、心臓が悲鳴を上げるのは時間の問題でしょう。

たとえ肥満ではなくても
加齢とともに血管は傷んでいく

 生活習慣にある程度気を配っていたとしても、血管がしなやかさを失っていくという加齢現象はなかなか避けることができません。年齢とともに血圧が徐々に上がっていくのもそのせいです。

 年だから仕方がないとそれを放置してしまうと、高くなった血圧が血管を傷つけて動脈硬化が進み、そのせいでさらに血圧が高くなり、それがまた血管を傷つけるという悪循環にもつながりかねません。

 そこで血圧のセルフチェックを習慣にして、高い値が続くようなら適切な治療を受けることも大事だと私は思います。幸い高血圧には、私がエーザイ時代に認知症薬の「アリセプト」よりも前に開発した「デタントール」をはじめとして、比較的安価で良い薬がたくさんあります。