なぜインド人は認知症になりにくいのか?認知症研究の第一人者が注目した「意外な食べ物」とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

アルツハイマー病治療薬の開発研究に取り組む薬学者、脳科学者・杉本八郎氏は、実績を残してエーザイを退職後、グリーン・テックを立ち上げた。そこで注目したのは、現在、臨床研究の前段階まで開発が進んでいる「GT863」だ。期待される「GT863」の画期的な効果とは?※本稿は、杉本八郎『82歳の認知症研究の第一人者が毎日していること』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。

「GT863」創薬のヒントは
インド人のアルツハイマー病のデータ

 私が立ち上げた「グリーン・テック」社では、カレーをよく食べるインド人のアルツハイマー病の発症率は、アメリカ人の約4分の1であるというデータに注目し、クルクミン(編集部注/ターメリックに含まれるポリフェノール)をヒントに創薬研究を開始しました。

 高分子で血液脳関門(BBB/Blood Brain Barrier)を通過できないはずのクルクミンの作用がなぜ脳内で見られるのか、その理由はまだはっきりとはわかっていません。それでも、カレーに含まれるクルクミンを混ぜた餌で飼育したマウスの海馬でアミロイドβの凝集が抑えられ、認知機能の改善も見られるという、インド人のアルツハイマー病発症率が低い理由を裏付けるような実験結果は2005年の時点ですでに明らかになっていました。

 そこで、クルクミンと同じ作用を持ち、かつBBBを通過できる低分子化合物を作る研究を苦心して続け、その合成に成功したのが「GT863」です。