私たちがマウスを使って行った実験で、GT863にはクルクミン同様にアミロイドβの凝集抑制作用があるのみならず、タウタンパク質の凝集抑制作用もあること、そしてこれらの作用により、学習能力の維持や低下の抑制が見られることが確認されました(図14参照)。

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高級車のような「GT863」の由来は
「グリーン・テックの八郎さん」

 つまり、GT863はアミロイドβやタウタンパク質の両方に対して凝集抑制効果を発揮するという点で、非常に画期的だと言うことができます。また、そのような効果のある物質は、今のところほかには報告されていません。

 ところで、このGT863の名前の由来はなんだと思いますか?

 まずGTは、「グリーン・テック」という私の会社名の頭文字です。

 また、この化合物の合成に成功するまでは、800回以上の失敗を重ね、GT863は、859番目に出来上がった化合物だったのです。

「いやいや、数字が違うじゃないですか」と今、思いましたよね。

 そうなんです。859番目にできたという意味では「GT859」でよかったのですが、これじゃ覚えにくいですよね?だから私の名前の八郎になぞらえて、ハチ・ロウ・サン=863にしたのです。

 つまり、GT863は「グリーン・テックのハチ・ロウ・サン」という意味なのです。これなら忘れないと思いますので、ぜひこの名前を覚えておいてください(笑)。

 アミロイドβとタウはどちらもタンパク質の一種であり、そしてこれらのタンパク質が異常に凝集することが、アルツハイマー病の、ひいてはアルツハイマー型認知症の原因です。

 実は特定のタンパク質の異常な凝集によって発症する可能性が指摘されている疾患はほかにもあります。