そして、健康効果や認知症予防効果というのは、何かを継続したことで、2次的にもたらされる結果です。

 そしてその2次的効果はそれをとことん極めようとすればするほど高くなります。逆にどれだけ効果的だといわれることでも継続できなかったり、あるいは適当にやっているというだけでは、健康効果も認知症予防効果もあまり期待はできないでしょう。

認知症リスクが上がる
最大の危険因子は難聴

 さて、2017年の国際アルツハイマー病学会(AAIC)において、認知症の専門家からなるランセット委員会は、「修正可能な認知症の危険因子」として「高血圧」「糖尿病」「肥満」など9つの項目を報告しましたが、その中の1つに「難聴」が挙げられました。その後、2020年には医学誌ランセットで、「予防可能な要因の中で最大の危険因子は難聴」という発表もなされています。

 難聴があると、音の刺激や脳に伝えられる情報量が少ない状態にさらされてしまい、それが認知症の発症に大きく影響するのではないかという国内外の報告もあるようですが、私は難聴が認知症リスクを上げるのは、人との会話が億劫になり、社会的孤立を深めてしまうことの影響が大きいのではないかと思っています。

 国立長寿医療研究センターが65歳以上の1万3984名を約10年間追跡した調査でも、「配偶者がいる」「同居家族と支援のやりとりがある」「友人との交流がある」「地域のグループ活動に参加している」「何らかの就労をしている」という5つのつながりをすべて有している人は、ひとつもない、あるいはひとつだけある、という人と比べて認知症発症リスクが46%低いこともわかっています(図10参照)。

図表1:つながりの多様性得点と認知症発症リスク同書より転載
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