孤立しがちな高齢者こそ
ボランティア活動に参加すべし

 このようなデータを見ても、仕事や趣味などを通じて配偶者や家族以外との積極的な交流を図ることは、認知症を寄せ付けないための重要な姿勢であるといえるでしょう。

 社会とのつながりを増やすという意味で、認知症予防に効果的だといわれるのがボランティア活動です。

 少し古いデータにはなりますが、2010年8月~2012年1月にかけて、全国の31自治体に居住する要介護認定を受けていない高齢者16万9201人を対象にした日本老年学的評価研究機構(JAGES)による調査でも、ボランティアグループ等の地域組織への参加割合が高い地域ほど、認知症リスクを有する後期高齢者の割合が少ないことがわかっています。

 確かにボランティア活動をすると、いろいろな人たちと交流したり会話したりすることができます。ただ、認知症のリスクを下げる理由はそれだけではなく、「継続のモチベーションが維持しやすい」ことも関係しているのではないかと私は思います。

 ボランティア活動は継続しやすいと言うと意外に思われるかもしれませんが、誰かの役に立ちたい、誰かを助けたいという利他の気持ちというのは実は「生き方の本質」です。だから、本来的にやる気が高まりやすいのです。

 私は人助けこそが人生の財産になると思っています。もちろんそれはお金などには換えることができない無形財産ですが、この無形財産をどれだけ築くことができるかが、人生の成功を左右するのです。

 1人ひとりがそのような姿勢で生きていれば心がきれいになり、争いも起きず、社会が混乱することもないので、結果として誰もが幸せになれます。

「大変なこと」や「面倒なこと」は
必ずしも「嫌なこと」ではない

 ボランティア活動にしても、誰かの役に立ちたい、誰かを助けたいという気持ちで励んでいれば、豊富な交流や会話の機会も得られますし、いつしかそれが自分の楽しみになれば、長期間にわたって継続することもできます。それが自分自身の認知症の予防にもつながるのだとすれば、これこそがまさに「情けは人のためならず」だといえるのではないでしょうか。