もちろん、この一連のキャンペーンは国民の共感を得ることができなかった。「なんでこういうことを言うかな」と多くの人がイラッときていたところに、農水大臣が呑気に「コメなんて買ったことない」などと口を滑らせれば、怒りが爆発するのも当然なのだ。

 このようなコメ行政の迷走ぶりを見て、筆者が感じるのは「ああ、これはもういよいよ海外米の輸入拡大に踏み切るのも時間の問題だな」ということだ。

 多くの専門家が指摘しているように、海外の安価な米をたくさん国内に入れれば、それにともなって日本の米の価格も下がる可能性がある。一方で輸入品拡大は「日本の米農家をさらに衰退させる」という指摘もある。筆者もそう思う。

 しかし、これまでの農水省やJAの振る舞いを見ている限り、彼らの頭の中には「減反政策など既存のシステムを守る」ということしかない。そういうシステム至上主義に取り憑かれた組織というのは往々にして、本来守るべき人々を犠牲にするという「自滅的な政策」に流れがちなのだ。

 一体どういうことか、順を追って説明しよう。

 本連載でも述べたように、昨年の「令和の米騒動」や今にいたる米価格高騰は、国が50年以上も続けてきた「減反政策」のせいで、コメ農家の生産量と競争力が壊滅的に低下したことが大きい。この人口増加時代に立ち上げた生産調整システムが、人口が急速に減っている今でも見直すことなく、あいも変わらず信奉されている。それによって、「米不足」や安定供給体制への不安などさまざまなシステムエラーが起きて、価格が上がっているのだ。

 これを改善するにはシステムを見直すことだというのは言うまでもない。減反政策の過ちを認めて、国をあげて米の生産拡大に乗り出し、輸出も増やしていくしかない。これまでのように減反を進めてサラリーマン化した兼業農家を補助金で「保護」するのではなく、日本米を世界市場に売っていくような大規模農業にこそ「支援」をする。