だから、あらゆる政策判断を「減反政策護持」から考える。しかし、先ほどから申し上げているように今の米価格高騰は減反政策が原因なので、これを守っている限り何も改善しない。備蓄米やバラマキでは焼け石に水だ。
このように敗色濃厚になればなるほど、大きくなるのが“ガマン系スローガン”なのだが、JAの「米は高くないキャンペーン」は大スベりしてしまった。しかも、国民がイラッときたところにタイミングよく、農水相が「米は買ったことがない」などと燃料を投下した。ここまでくると、もはや後がない。
そうなると、この手のシステム至上主義組織が踏み切るのは「玉砕」と相場が決まっている。日本軍が「国体護持」にこだわるあまり、国民の命や、最前線の兵士たちを粗末に扱ったように、システムを守るために、本来守るべき人々を捨て石にするということが起きてしまう。
ここまで言えばお分かりだろう。これこそ、筆者がコメ行政がいよいよ「外国産米の輸入拡大」という愚かな自滅行為に走ると考える理由だ。
ちょっと考えれば、そんなことをすれば日本のコメ農家をさらに弱体化することになることは明らかだとわかるはずだ。しかし、「減反政策護持」が最優先事項となってしまっているコメ行政の大本営の頭には、「コメ農家にも多少の犠牲を強いる」という苦渋の決断になるのだ。
こういう話をすると決まって「この左翼!なんでもかんでも日本軍と結びつけるな」とお叱りを受けるが、戦後日本の政治、経済のシステムをつくったのはすべて戦前の教育を受けた人々である。戦前は「産業戦士」という言葉があったように、民間企業でも軍隊的なマネジメントが導入されていたのだ。
戦時を経験してきた人々に話を聞くと、80年前の日本人も令和の日本人もそれほど大きな違いがないことに気づく。組織に属している人たちも、今の我々と同じように「なんで、こんな理不尽な決定がなされるんだ」と憤りながら組織の命令に従っていた。