いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

好きな人と仕事をするには?
「好きな人と仕事をする」のをモットーとしている私は、「誰とやるか」がもっとも大事で、次に「内容が面白いかどうか」、そして最後に自分の強みや得意が活かせるかどうかだと考えている。
この順番が守れているときは幸せに仕事ができる。
たとえ自分の得意なことであっても、一緒に仕事をする人のことを好きになれなかったり、内容が面白くなかったりすればやりたいとは思わない。
とはいえ、いつも「この人と仕事をしたい!」と最初から思っている人とばかり組めているわけではない。
フリーなので仕事を断る自由は一応あるが、多くは依頼があったらそのプロジェクトのメンバーにアサインされて、初対面の人とも一緒に進めていくことになる。
しかし、その場合でも「好きな人と仕事をする」ことはできる。
一緒に働く相手を好きになればいいのだ。
人を好きになる方法
人を大好きになる方法がある。
「この人とは縁があると思い込む」ことと、「相手について知る」ことだ。
最初から「苦手なタイプかも……」とか「うまくやっていける相手だろうか?」という懐疑的な態度を持つのではなく、最初から、好きになる前提で会うのだ。
そして、話をよく聞いて相手のことを知ろうとする。その日、解散したあともその人のことを考える。よさを言語化してみる。
こうすると、相手のことをみるみる大好きになっていく。「この人と一緒に仕事ができて幸せだなぁ!」という気持ちになるのだ。
奇しくも、古代ローマの哲人皇帝マルクス・アウレリウスが「仲間として授かった人を愛せ」と言っていることを知った。
仲間を愛する
偽りなく心から愛するのだ。(マルクス・アウレリウス『自省録』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より
マルクス・アウレリウスは、ローマ皇帝として役割を果たしながらストイシズム(ストア哲学)を実践して生きた人である。
自ら軍を率いて戦い、蛮族の侵攻や疫病の蔓延など難しい局面で対処を考え、周囲の裏切りに遭ってもなお心の平静を保とうと努力した。
そのマルクス・アウレリウスが、「仲間として授かった人々を心から愛せ」と言っているのだ。
ストイシズムは、他人や外部のできごとをコントロールすることはできないが、自分の心はコントロールできると説く。
皇帝なのだから、そのまわりにはずるい人間から嫌なやつ、苦手な相手まで、ありとあらゆる人間がいたことだろう。
そんな環境や相手を変えることはできない。しかし、愛することはできる。つねに簡単にできるとは言わないが、他人や外部のこととは違い、自分の心は努力しだいではコントロールできる。
相手を愛することができれば、良い関係を築き、協力して良い結果に向かうことができる。
そのプロセスこそが幸福な人生を生きるうえで大事なのだ。
この言葉を読むと、マルクス・アウレリウスが背中を押してくれているようで嬉しい。これからもますます、目の前の仲間を好きになり、良い仕事をしていきたいと思う。
(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)