あなたは最近、仕事で「考える」ことが増えていませんか? 新しい商品やサービスの企画。販売や宣伝の立案。マネジメント、採用、組織運営の戦略など。従来の方法が通用しなくなったいま、あらゆる仕事で「新しいことを考える」ことが求められます。でも、朝から晩まで考え続けた結果、何も答えを得られずに1日が終わる――そんな経験のある人が多いのでは。
「その悩み、AIを使えばぜんぶ吹っ飛ばせます」。そう語るのは、これまでにグーグル、マイクロソフト、NTTドコモ、富士通、KDDIなどを含む600社以上、のべ2万人以上に発想や思考に関する研修をしてきた石井力重氏です。古今東西の思考法、発想法を駆使してアイデア発想や問題解決をしてきた石井氏ですが、なんとそのほとんどはAIで実行できたと言います。そのノウハウを56の技法に凝縮してまとめたのが、書籍『AIを使って考えるための全技術』。この記事では同書から、AIを使って「アイデアの弱点を検証する」ための技法を紹介します。

現場と上層部では、見える「景色」が異なる
アイデアを出し、企画に整え、実行へとつなげていく一連の工程の最後には、企画書にまとめて上層部にプレゼンしたり、稟議を回したりする段階が来ます。
私はいろんな会社の様々な企画の現場に立ち会っていますが、よく上層部や幹部の方々から、こんな嘆きを聞きます。
「こんな程度のダメ出しをしなくちゃいけないなんて……」
「評価に値する段階になってないよ」
「まだ生煮えだな」
上層部にしてみれば当然の、ある意味でお作法のごとく踏まえてほしいポイントなんて、現場からはわからないものです。それも当然。上層部や幹部と現場とでは、見える景色が違います。
アイデア研修の後半で、場に出た案に対して「お互いにダメ出しをする」というセッションを希望する企業もあるのですが、現場同士で話し合っていても上層部の真意にはなかなか迫れません。
AIに、上司の代わりに指摘してもらう技法
「ダメ出しの模擬」
そうは言っても、忙しい上司や経営陣たちに、何度も「ご確認いただき、ダメ出ししてください」なんて頼めません。「思考停止している」と思われかねませんから。
そこで、上司や経営者に代わってAIにダメ出しをしてもらう技法が「ダメ出しの模擬」です。これが、そのプロンプトです
〈企画を記入〉
この企画に、上層部はどのように反応するか、指摘事項を教えてください。上層部が重視する評価軸は、一般的な大企業のものを援用してください。
企画に対する上層部からの指摘事項をAIに代打してもらいましょう。要するに「高い壁」になってもらうわけです。
AIからのダメ出しを受けて、企画をブラッシュアップしてから上司や経営者に提案する。稟議にかける。そうすれば、上層部が「こんなレベルのことを言わなきゃいけないのか」と思うようなレベルの指摘は受けずに済みます。企画の本質を吟味してもらい、実施に向けて前進していけるでしょう。
大企業の審査・検討基準で、的確にダメ出しをしてくれる
プロンプトの表現はシンプルですが、「指摘事項」と記載しているのがポイント。肯定と批判、どちらも出せる余地があるように表現することで、「強い否定」へとAIの回答を誘導しないようにしています。
このプロンプトを使うと、AIはダメ出しの基準として一般的な大企業のものを援用します。「ウチは中小企業だから合わないかも」と思うかもしれませんが、やってみると、これが結構的確なんです。「そうそう、まさにウチの企画会議ではこういう指摘が返ってくる。なんでわかるんだろう?」というような驚きがあります。業界や業種、規模が異なっていても、会社の経営層として踏まえておくべき視点は、ある程度共通しているということでしょう。
もちろんなかには、独自性の強い会社や、社内における評価基準が明確な会社もあります。そういった自社の特性がわかるなら、「上層部が重視する評価軸は~~という点です」などと言語化して、プロンプトに追加してください。
本当の上司に指摘される前に改善できる「ダメ出しの模擬」。アイデアのブラッシュアップにはもってこいの技法です。
(本稿は、書籍『AIを使って考えるための全技術』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)