
AIの活用は、もはや一部のハイテク分野だけの話ではない。投資信託の世界でも、AIが膨大な銘柄データを分析し、その結果を運用に役立てる商品が登場している。
ダイヤモンドZAi「NISA投信グランプリ2026」世界株部門で、最優秀賞を受賞した「AI(人工知能)活用型世界株ファンド[愛称:ディープAI]」(アセットマネジメントOne)も、そのひとつだ。先進国・新興国を含む約4000銘柄を、AIが点数化しながら運用している。
投資信託の評価軸である「高いリターン」と「下がりにくさ」を、どう両立しているのか。ファンドマネジャーの飛田潤一郎さん、岡竜也さんに聞いた。(須賀彩子、ダイヤモンド・ザイ編集部)
人間のアナリスト100人分を
一気に処理
――「AI」という言葉は、ここ数年で一気に身近になりましたが、このファンドは2017年からAIを活用した運用を行っています。どのような特徴があるのでしょうか。
飛田潤一郎(とびた・じゅんいちろう)さん●アセットマネジメントOne クオンツ・インデックス運用部 クオンツ株式担当ファンドマネジャー。1991年、第一生命保険相互会社。2001年、興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現:アセマネOne)、以来一貫して内外株式のクオンツ運用を担当。運用従事25年超。
飛田 最大の特徴は、AIによる膨大な情報の分析です。
まず、AIが先進国・新興国を含む約4000銘柄をスコアリングします。株価や財務データ、利益予想といった数字に加え、ニュースなどの文章データも解析対象です。それぞれの銘柄に点数をつけることで、株価の上昇が期待できる銘柄から、相対的に魅力が低い銘柄まで順位をつけます。
――4000銘柄とは、かなり多いですね。
飛田 はい。全世界株指数(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス)の構成銘柄が約2500ですから、それよりも幅広い対象になります。約4000銘柄のおよそ25年間にわたる膨大なデータを学習させていますが、これは人間のアナリストが分析しようとすると100人分の作業量に匹敵します。
岡 人間のアナリストでは、どうしても担当する地域や業種が限られます。だから、米国のある企業と中国の別の企業を比較して、どちらに投資妙味があるかを判断するのは難しい。AIはそれを一括して処理できます。
岡竜也(おか・たつや)さん●アセットマネジメントOne 株式運用部 外国株式担当ファンドマネジャー。2008年、みずほ信託銀行、2016年のアセットマネジメントOne発足時から外国株アナリストとしてキャリアを開始し、以降一貫して外国株式運用に携わる。2017年から約2年間、米ニューヨーク勤務。運用経験21年以上。
――点数の高い銘柄から、ポートフォリオに入れていくのでしょうか。
飛田 運用のプロセスとしては、AIによる銘柄のスコアリング、ソフトウェアによるポートフォリオ構築、そして人間による補正、この3フェーズになります。
岡 目指しているのは、リターンの最大化とリスク抑制の両立です。
単純に点数が高い順に組み入れていくと、今度はリスクが高まってしまう。そこで、この業界でスタンダードなリスクモデルを使ってポートフォリオを構築しています。これは、銘柄をスコアリングするAIとは別のソフトが行います。
飛田 AIの評価が基本になりますが、ポートフォリオの構築で、リスクが高い銘柄の比率を抑えたり、売買回転率を調整します。頻繁な売買はコスト増につながり、運用成績にも影響するので。保有銘柄の順位が少し下がったからといって、すぐに売却しないこともあります。
――具体的に、AIの評価を調整したケースを教えてください。
飛田 たとえば、米アップルやエヌビディアに対するAI評価が高くないことがありました。株価がすでに大きく上昇していたことや、その勢いが鈍化したためだと推察できました。
ただ、こうした時価総額の大きい企業をまったく持たないと、市場上昇の恩恵を取り逃すリスクもあります。そのため、ポートフォリオの構築のほうで、大型銘柄は保有する設計にしています。
――AIの点数を重視するケースもあるんですよね?
飛田 はい。たとえば、通信大手ベライゾンの比率が大きい局面がありました。これは、AIが株価の割安感、業績動向、ニュースへの市場の反応、財務状況など、さまざまな要素を総合的に評価した結果です。
岡 AIはあらゆるリスクリターンをすべて見ます。ときには、「なぜこの銘柄が上位に?」と感じることもあります。
また人間による運用では、暴落時にひるんでしまったり、逆に好調な相場が続くとリスクを取りすぎてしまうことがあります。AIには、そうした感情のバイアスが入りにくいという強みがあります。
――人間が介在するのは、どのような場面ですか。
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