吉光 国によって傾向は異なります。中国企業は、国が大株主になっていることが多く、国への利益還元として配当を積極的に出す傾向にあります。台湾企業はITや半導体など成長分野にいながら配当も出し、収益を得やすい状況です。また、タイやインドネシアでは創業一族が大株主になっているファミリー企業が多く、そうした企業は配当を重視しています。シンガポールも銀行などを中心に株主還元を重視する企業が多いです。一方で、インドなどはまだ会社が成長ステージにある企業が多く、利益を事業投資に優先的に回すため、配当は二の次になる傾向があります。

――中国への投資比率が23%と国単位では最多です。中国経済についてはどのように見ていますか?
吉光 中長期的には、中国経済はまだ成長する余地があると考えています。一人当たりのGDPはまだ1万ドル台前半と低い水準で、地方を中心に成長余地があります。中国は過去に成長を最優先させる政策でしたが、ここ数年はそのスタンスを後退させ、構造改革とのバランスを重視しています。構造改革が成功すれば、主要国よりも高い成長率を、より長い将来にわたって維持することも可能になるでしょう。
――中国株とは、どのように向き合っているのでしょうか?
吉光 最近の中国株については、「下がった時に買い、上がった時に売る」というスタンスで臨んでいます。2024年の初めは中国株全体が大きく下がったため、投資するいいチャンスでした。現地企業や現地アナリストに話を聞き、企業業績に問題がなさそうな銘柄を選んで購入しました。配当利回りで見ても、非常に魅力的な水準になっていました。
成長企業でも「高配当」は可能
IT・半導体株の意外な魅力
――高配当がテーマの投資信託ですが、組入上位には半導体やIT企業など、成長株(グロース株)に分類されそうな銘柄も含まれていますね。
吉光 はい。例えば、ネットイースは中国のゲームソフト開発会社です。一般的にゲーム会社は配当をあまり出さない傾向がありますが、この会社は株主還元に積極的で、配当を出すだけでなく自社株買いも行っています。また、今後の成長も期待できる企業です。
もう一つ、メディアテックは、スマートフォンなどに使われるICチップをデザインしている会社です。自社で工場を持たないファブレスメーカーなので、大きな設備投資が不要で資金繰り(キャッシュフロー)が良好です。そのため、余剰資金を配当として出す傾向があります。
――台湾セミコンダクター(TSMC)は、配当利回りが2%未満ですが、2025年4月末時点で組入第3位となっています。この理由は何でしょうか?
吉光 台湾セミコンダクターは、投資した時点では配当利回りが市場平均を大きく超えていました。しかし、株価が上昇したため、2025年4月末時点の配当利回りは2%を若干下回っています。ただ、この会社は非常に高い競争力を持っており、今後も配当を増やすことが期待できるため、引き続き保有しています。
流行に流されず信念を貫く
割安株にこだわり続けるワケ
――2021年以降は4年連続でいい成績を残していますが、2020年は伸び悩みました。
吉光 2020年はコロナショックの影響で大規模な金融緩和がなされた局面で、中国のIT関連株などが大きく値上がりしました。一方で、割安株はあまり買われない相場でした。また、その前の2017年も中国のインターネット関連株が非常に人気となり、株価が高くてもどんどん買われる状況が続きました。私たちは株価が高すぎる株には投資しない方針なので、このような相場では市場平均(指数)に勝つことは難しくなります。
しかし、株価が高騰しすぎた銘柄も、逆に売られすぎた銘柄も、時間が経てば本来の価値(フェアバリュー)に戻るものと考えています。流行に流されず、「中長期的に株価は企業の本源的な価値に収れんする」という信念を貫いていることが、長期的に良い成績につながっていると自負しています。長期的に見ると、アジア株は割安株が勝つ傾向にあると考えています。
◆新興国株部門 最優秀賞
「アジア好配当投信」とは
アジアの中から配当利回りが高い銘柄を選んで投資する投資信託。配当利回りを重視し、割安な銘柄に投資するため、市場全体が大きく値下がりする局面でも、下落幅を小さく抑えられる傾向がある。高配当株といえば銀行や建設・不動産関連をイメージしがちだが、この投信には台湾企業などを中心に、半導体やIT関連株も含まれているのが特徴。成績が安定しており、いつでも安心して持ちやすい。
ダイヤモンド・ザイでは1年に1回、「NISAで買える本当にイイ投資信託」を部門別にランキングし、上位のファンドを表彰している。人気や知名度ではなく、データを最重視した完全実力主義のアワードだ。「1.どれだけ上がったか(上昇率)、2.どんな時も下がらない(下がりにくさ)、3.ずっと優等生(成績の安定度)」の3つの独自基準で評価を行う。また、非常に人気があり多くのお金を集めているにもかかわらず成績が振るわない投資信託も、「もっとがんばりま賞」として発表している。
<ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2025>
[2025年]受賞投資信託30本一覧
▼日本株総合部門
▼日本中小型株部門
▼米国株部門
▼世界株部門
▼新興国株部門
▼リート部門
▼フレッシャー賞
▼もっとがんばりま賞
▼(番外編)インデックス型「最安ランキング」
▼当グランプリの「選定基準」はこちら⇒https://diamond.jp/articles/-/363017