ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2025の「日本株総合部門」で最優秀賞に輝いた投信信託は「One割安日本株ファンド(年1回決算型)」(アセットマネジメントOne)。どの期間で見てもTOPIXを大幅に超える「上昇率」に加え、「下がりにくさ」や「成績の安定度」の評価基準でも高得点を獲得した。単純な割安株投資にとどまらない、ひと味違う運用戦略がその秘訣。詳細を運用責任者の安西慎吾さんに聞いた。(ダイヤモンド・ザイ編集部)

低迷していた半導体株に投資
割安株に逆風が吹く中で支えに!

――割安株に投資する他の投資信託と比べて、安定して好成績をあげています。

アセットマネジメントOne安西慎吾さん安西慎吾さん(あんざい・しんご)さん●アセットマネジメントOne 国内株式担当 ファンドマネージャー。1998年、富士投信投資顧問(現・アセットマネジメントOne)入社。2000年から一貫して日本株の運用に携わる。2019年より「One割安日本株ファンド」を担当。

安西 市場対比で“大やられ”しない運用を心がけています。例えば2019年と2020年は、グロース相場(成長株が強い相場)でした。割安株に投資する投資信託にとっては逆風で、特に2020年はきつかった。コロナショックを受けて、日本も欧米各国も金融緩和と財政政策の拡張を行い、中小型のグロース株が有利な相場だったんです。そこをなんとか耐えて、ほぼ市場並みの成績を達成することができました。

――どのような運用が功を奏したのでしょうか。

安西 銀行株や総合商社、自動車株といったバリュー株(割安株)は当然として、実は、加えてハイテク株に結構投資していたんですね。2019年の初め、景況感が悪化する中で、半導体株が非常に低調な時期がありました。そこで、半導体製造装置の東京精密、スクリーンホールディングス、ディスコなどを仕込んでいました。東京精密を除いて昨年、利食い売りしたのですが、それらの銘柄群が、バリュー株が悪い時に支え、良い時も成績に貢献してくれました。

――半導体株ですか! 一般的にイメージされる割安株とはちょっと違いますね。

安西 半導体株は循環的に業績や株価が動く一方で、成長産業だとみていましたので、割安な時に買っておこう、と。当時、PERが13~15倍くらいでしたから。

市場よりも早く的確にいい銘柄を見つける
ソニーや日立にもいち早く投資!

――組み入れる銘柄はどう選んでいるのでしょうか。

安西 組入銘柄数は50~100程度で、現在は77銘柄に投資を行っています。まず上場銘柄約3800から、信用リスクや流動性のリスクの高い銘柄を排除し、配当利回り、PBR、PERといった株価指標で300銘柄程度に絞り込みます。その際、どれかがTOPIXに対して割安であればいい、ということが1つのポイントで、柔軟に割安性を判断しています。

 その300銘柄を中心に私自身とアナリストチームが企業調査を綿密かつ網羅的に行い、利益が伸びるか、業績が改善するかを判断します。さらに後ほど説明しますが“カタリスト”を勘案して、この先に割安性が解消される、つまり株価が上がる見込みが高い銘柄に選別投資をしていきます。

――組入上位銘柄を見ると、ソニーグループや日立製作所のような成長株の側面を持つ企業も入っているのが興味深いところです。

安西 実はソニーも日立も3、4年前くらいまでは、どちらかというと成長性については厳しい評価だったんですよ。構造改革に取り組んで、ようやく花開いてきたのはここ数年の話なんですね。アナリストチームには、テクノロジーから金融、インフラまで、ベテラン揃いのセクターアナリストが17名いますので、市場よりも早く的確にいい銘柄を選択することができると考えています。