頭の悪い人は「世界は観察すれば理解できる」と考える。じゃあ、頭のいい人は何と考える?
次々と新たなビジネスを仕掛ける稀代の起業家、佐藤航陽氏。数々の成功者に接し、自らの体験も体系化し、「これからどう生きるか?」を徹底的に考察した超・期待作『ゆるストイック』を上梓した。
コロナ後の生き方として重要なキーワードは、「ストイック」と「ゆるさ」。令和のヒーローたち(大谷翔平、井上尚弥、藤井聡太…)は、なぜストイックに自分に向き合い続けるのか。『ゆるストイック』では、新しい時代に突入しつつある今、「どのように日常を過ごしていくべきか」を言語化し、「私自身が深掘りし、自分なりにスッキリ整理できたプロセスを、読者のみなさんに共有したいと思っています」と語っている。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

頭の悪い人は「世界は観察すれば理解できる」と考える。じゃあ、頭のいい人は何と考える?Photo: Adobe Stock

「すべて理解できる」は頭の悪い思考法

 かつて人間は、「世界は神によって創られたもの」と信じ、説明のつかない出来事も「神の意志」として受け入れてきました。

 疫病、天災、飢饉。そうした不確実性に対して、人は理解を諦めることで、なんとか生き抜いてきたのです。

 ところが、近代になり科学が台頭し、「世界は観察すれば理解できる」とする合理主義が広まりました。

「わからないもの」は「わかるもの」であるはずだ、という前提が社会に根づいたのです。

 それから長らくのあいだ、私たちは「わからない」ことを認めるのが苦手になっていきました。
 あいまいさは排除され、「理由のある行動」や「根拠ある選択」が求められるようになりました。

 しかし今、そんな正解幻想に限界が訪れています
 パンデミック、戦争、気候変動、金融危機……。
 いずれも予測が難しく、誰もが「まさか」と思った出来事です

「すべて理解できる」と考えることは頭の悪い思考法なのです

「VUCA(不安定・不確実・複雑・曖昧)の時代」と言われる今、私たちは再び、かつての“不確実性”に直面しています。

「努力は必ず報われる」という呪い

 加えて、テクノロジーによって情報がリアルタイムに拡散する現代では、一夜にして信用が崩れたり、無名の人が急にスターになったりする出来事も日常的に起こります。

 世界は複雑に絡み合い、予測不能な「自然界的カオス」へと戻りつつあるのです

 そんな今だからこそ、「わからないものを、わかったふりで処理する」生き方を手放す必要があります。

 正解のない現実を、無理に「理解できるもの」として扱うことは、むしろ私たち自身を追い込んでしまいます。

 さらに、近代社会が信じてきた「努力は必ず報われる」という価値観も、実は不確実性を遠ざけるための“呪い”のような側面がありました。

 努力と結果が常に結びつくわけではない。
 むしろ、運やタイミングの影響が大きい場面もあることを、私たちは受け入れ直すべきでしょう。

 不確実な世界を前提に、「それでもどう生きるか」を自分なりに選び取ること
 それこそが、近代の呪縛を超えて、これからの社会を生きる、頭のいい人になるヒントになるはずです。

佐藤航陽(さとう・かつあき)
株式会社スペースデータ 代表取締役社長
1986年、福島県生まれ。早稲田大学在学中の2007年にIT企業を設立し、代表取締役に就任。ビッグデータ解析やオンライン決済の事業を立ち上げ、世界8ヵ国に展開する。2015年に20代で東証マザーズに上場。その後、2017年に宇宙開発を目的に株式会社スペースデータを創業。コロナ禍前にSNSから姿を消し、仮想現実と宇宙開発の専門家になる。今は、宇宙ステーションやロボット開発に携わり、JAXAや国連と協働している。米経済誌「Forbes」の30歳未満のアジアを代表する30人(Forbes 30 Under 30 Asia)に選出される。最新刊『ゆるストイック』(ダイヤモンド社)を上梓した。
また、新しくYouTubeチャンネル「佐藤航陽の宇宙会議」https://youtube.com/@ka2aki86 をスタートさせた。