まさに、この2つをしてしまうことは、「認知的思考で期待があるから怒る」「正しさを主張するから否定する」わけです。つまり、大谷翔平さんの親はもちろん、自分らしく個性をつぶされることなく生きているアスリートたちの親は、間違いなく「非認知的でアート的な子育て」を実践しているのです。
特別な厳しさが彼らを超一流にしたのではなく、誰もができる「非認知的な脳による生き方を大切にした子育て」と言えます。
将棋界の至宝・藤井聡太は
どのようにして育てられたのか?
大谷翔平さんと同じくらい、多くの日本人が注目する若者の1人が将棋名人の藤井聡太さんです。彼の親もまた、「非認知的なアプローチの価値観」を持った子育てをされた方なのではないかと推察されます。
「親は親、子どもは子ども」という意識のもとで、子どもの「好きなこと」「やりたい」という意欲を重んじ、「余計な口出しはしない」という原則を徹底されたそうです。
藤井聡太さんのご両親は、「息子がなにかに集中しているときは絶対に止めないように心がけていた」というのは有名な話です。
普通であれば、「ご飯の時間だよ」「お風呂に入りなさい」などと、予定を重んじる大人たちは、生活のリズムに合わせて中断させたくなるでしょう。しかし、子ども自身で区切りがつくまで声をかけなかったと言います。「子どもに対して見通して待つ」を実践していたことになります。
中学校に上がると、藤井聡太さんが熱中したのは、英語や数学などの「主要教科」ではなく、地理だったそうです。
「藤井さんは、他科目はそっちのけで山や川の名前ばかり熱心に覚えていたそうです。でも、ご両親は『もっと英語を勉強しなさい』とか、『数学をやりなさい』ということは言わなかった」(前出)
との取材記事もありました。
藤井聡太さんが負けて泣くのを止めなかったときのご両親の対応も、信じて個性をつぶさない対応のように感じます。床にひっくり返るほどの泣き虫だった藤井さんを、お母さんは気が済むまで泣かせたそうです。