パリに本社を置く、世界屈指の大手金融グループ、BNPパリバ・アセットマネジメント(以下、BNPパリバAM)のダニエル・モリス・チーフ・マーケット・ストラテジストがこのほど来日し、「2025年の投資環境と今後の見通し」について語った。「トランプ関税」の影響で世界の各企業の業績見通しが不透明な中、モリス氏は「トランプ関税公表後の日本株は強く、小型株が堅調」と日本株の優位を指摘。さらに、中国株のテクノロジー関連にも注目だという。(ジャーナリスト 武田信晃)
世界の投資家がアメリカを「TINA」と呼ぶ
アメリカ抜きに世界は回らない?

トランプ大統領が次々と打ち出す各種政策が世界経済の波乱要因となっている。特に2025年4月2日に発表した「トランプ関税」は投資家心理に大きな影響を与え、世界中の株式市場が暴落したことは記憶に新しい。一方で、アメリカ国債10年ものの利回りが急上昇し、一気に4.5%を超えたことで、90日間の相互関税の停止につながった。モリス氏は「アメリカに対する認識が変わったのは確かだが、アメリカ経済の基本的な強さと市場の大きさは変わっていない」と語る。
なぜか?
今、投資家の間でアメリカのことを「TINA」であるとする見方がある。TINAとは「There Is No Alternative」の頭文字をとった言葉で「替えが効かない」という意味だ。アメリカを好む好まざる関係なく、アメリカ市場に代わる選択肢がないという考え方だ。
それは貿易においても同じで、多くの国にとって米国市場を中国市場などに置き換えるのは簡単ではない。BNPパリバAMが分析したところによると、もし米国から中国に置き換える場合の輸出増加率は、ブラジルは36%増、日本は95%増とほぼ2倍に増やす必要があり、簡単なことではない。西ヨーロッパ諸国は軒並み2倍以上への増加が必要であり、現実的ではないだろう。
トランプ大統領は、アメリカ市場なしで世界経済を回すことはできないと考えており、実際に、こうした貿易データなどを見ると、それが現実だと考えられる。
トランプ関税で世界はてんやわんやも
日本株は世界の株式市場と比べると好調
株式市場を見てみたい。相互関税を発表した4月2日にトランプ大統領は「解放の日」と話していたが、BNPパリバAMの分析によると、4月8日以降の株式相場は上昇に転じ、多くの市場で「解放の日」の水準を上回っている。特に日本株とナスダックはリバウンド幅が大きい市場だった。
モリス氏は「ナスダックはアメリカのハイテク関連株なので関税の面では優遇されると考えられます。日本株は率直に言ってかなり好調ですが、主因は、この時点で日本株がとても割安だったため、多くの投資家が投資する機会だと捉えたのでは」とその背景を説明する。