手術は成功、患者は退院したけれど……

 肖医師は上司からの返事を待ちながら血圧を測り、血圧を下げる薬と水を飲んだ後、一緒に手術室を出たインターン医師とは別の医師とともに手術室に戻り、麻酔が切れる前に手術を終わらせたという。病院の発表も、くだんの患者は術後順調に回復し、6日目に無事退院したと強調している。

 しかし、4月18日付けのこの告発の手紙が外部に流れ、大騒ぎになった結果、病院は4月27日に肖飛医師を即時解雇すると発表した。

 だが、疑問は残った。手術室の医療事件は昨年7月に起きており、そのことを日中友好病院の管理トップは知らなかったのか? それとも調査が行われた結果、肖医師は勤務を続けていた? あるいは事件について調査もせず、知らん顔をしていたのか? なぜ今になって彼をクビにするのか? それとも告発がなされなければ、この問題はお蔵入りになっていたのか……?

 病院で治療を受ける(可能性のある)患者にとっては一大事である。さらに今後、こうした事件が起きた場合どう処理するべきか、医療システムの観点からも大きく問われるべき事態のはずだった。

 それが、当該医師の妻による告発文書で初めて公にされたことに対して、議論が巻き起こったのだ。

不倫相手の女性インターン医師は、新システム「4+4」出身

 同時に、肖医師が手術室を飛び出したときに一緒に連れ去った女性インターン医師にも注目が集まった。肖医師の不倫相手の一人、董襲瑩医師である。告発書には、董医師が自分の子どもを妊娠したことを母親との間で認めたSNSメッセージのキャプチャも添付されていた。

 肖医師の妻が告発の手紙を書いたのも、董医師の妊娠を理由に肖医師が離婚を切り出したのがきっかけだった。肖医師が夫人との間に生まれた娘の養育権と不動産の権利を要求したことで彼女が激怒したのだ。

 1996年生まれの董医師は告発を受けて病院に肖飛医師が解雇された際、「すでに本院のインターンではない」とだけ発表された。その後、明らかになったのは彼女が「協和医学院4+4」システムを卒業し、正式には中国医学科学院腫瘤科医院所属のインターン医師だったということだった。

「協和医学院4+4」というのは、100年以上の歴史を持ち、外国人や政府トップ用の専門病棟を持つトップ病院「協和医院」が併設する医学院で、2019年から導入された新システムの医学課程のことである。

「4+4」は大学の本科課程を終えた人物が、協和医学院に入学して4年間の医学研修を受けるシステムだ。実は中国の医学課程は学校ごとにさまざまで、現在一般的なのが大学の専門課程で5年学んだ後に3年間で博士課程を終え、その後さらに3年間のインターンを経験する「8年制」と呼ばれるコースだ。