たとえば、Aさんがパリへ行った話をし、それに対してBさんが都内のフランス料理店へ行った話をしていたら、そこに重なるような、自分ならではの視点のネタを思い起こし、会話に加わっていくわけです。

 車の運転でいえば、一般道から高速道路の本線に合流するような感覚でしょうか。他の車が時速80kmで走っているところに、自分だけ50kmで入ろうとしても危険です。流れを読みながらちょうどよく加速し、タイミングを見計らって入っていくのです。

「大喜利」で無双する芸人と仕事がデキる人に共通する「即レス力」の鍛え方『最強の言語化力』(齋藤 孝、祥伝社)

 流れを読めていない人がこれをやろうとすると、たとえば2人が温泉旅行の話をしているところに、「ふぅん、全然関係ないんだけど、こないだ映画を観に行ってさ」と無理やり無関係なネタをねじ込んでしまうことになります。これではただ会話を邪魔して相手を不快にさせるだけです。

 会話も文章と同じで文脈というものがあり、これを読み取るのはコミュニケーションにおける基本中の基本です。仮にそのスキルを「文脈力」とするならば、その力は文章よりむしろ、会話の場合のほうが重要な意味を持つことが多いのです。

 日常会話では、概して文書よりも話の内容が散らかりがちです。それだけに、場面に応じて流れを読む、すなわち文脈力を発揮できる人が、コミュニケーション力も言語化力も高いということになるわけです。