
外国語を学ぶとき、自分の話してきた母語と切り離して考える人がほとんどだろう。しかし教育学者の齋藤 孝氏は、まずは母語をしっかり学ぶことが外国語の習得につながる、と指摘する。AIの翻訳機が活躍する現代でも、我々人間に求められる国語力とは。※本稿は、齋藤 孝『最強の言語化力』(祥伝社)の一部を抜粋・編集したものです。
イチローの指導法に学ぶ
相手に合わせる「言語化」
元メジャーリーガーのイチローさんは、たびたび日本へ帰国して全国の高校球児へ指導をしています。その様子をニュースで目にするとき、感心するのは、イチローさんが常に相手のレベルに合わせた言語化をしていることです。
強豪校では高い課題を提示してやや厳しめに接し、「聞きたいことがあればどんどん聞いて」というスタンス。一方、公立の進学校では選手を肯定的に褒めながら、比較的優しい目標を提示し、そのうえで自分から積極的に話しかけながら練習方法を伝えているように見えました。
以前、ある企業の管理職の方と話したとき、仕事につまずいている部下と接するときのコツについて伺ったところ、次のように仰っていました。
まず、これまでの良かった成果を見つけて褒め、存在を受け入れる。ノルマのラインは優しめに設定し、そこから階段をステップアップするような形で背中を押してあげて、そのうえで新しいスキルを身につけるための研修を提案するなど、段階を踏んだ成長の機会を与えるのが基本ということでした。