『貯金40万円が株式投資で4億円』『賢明なる個人投資家への道』(ともにダイヤモンド社)を著したXフォロワー数34万人超の専業投資家・かぶ1000氏。中学2年(1988年)から株式投資を始め、専業投資家歴37年目となる。中学時代は体育のジャージ姿で、地元の証券会社に通い詰め、年寄りの投資家たちにかわいがられ、バブル紳士には金儲けのイロハを教えてもらった。中学3年で300万円、高校1年で1000万円、高校2年で1500万円へと株式資産を増やし、会計系の専門学校卒業後、証券会社からの就職の誘いを断って専業投資家の道へ。時価総額に比べて正味の流動純資産が著しく多い「ネットネット株」や、豊富な不動産含み益などを持つ「資産バリュー株」への投資を得意とする理論派として、資産を安定的に増やしてきた。2011年に累計利益1億円を超えると、その後も順調に資産を増やし、2015年に3億円、2019年に4億円を突破。中学2年から株ひと筋で、アルバイト経験さえない根っからの専業投資家が、保有株全体を1つの会社に見立てる考え方や銘柄との付き合い方など、投資初心者にも役立つ投資法を全公開!
※本稿は、『貯金40万円が株式投資で4億円』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

【実録】小学4年生で「アービトラージ」を実践した天才肌の専業投資家

専門学校卒業後、いきなり専業投資家に

 専門学校を出てから、私は就職せず、専業投資家になりました。

 ところが初めの数年、運用成績はパッとしませんでした。相場全体も低迷しており、儲けたり、損をしたりの繰り返しで、資産を大きく増やせずにいたのです。

糊口をしのいだのは「アービトラージ」

 その間、糊口をしのぐ手段になったのは「アービトラージ」。日本語で「裁定取引」と呼ばれているものです。

 アービトラージとは、金利差や価格差を活用して、その差額である「利ざや」を稼ぐというもので、「サヤ取り」とも言われています。

 さまざまな取引手法を駆使して市場が上がっても下がっても利益を追求する「ヘッジファンド」の投資手法として知られていますが、考えてみると私は小学生の頃からアービトラージを実践していたのです。

小学生時代に身につけた「サヤ取り」の感覚

 小学生の頃、私は大好きだったファミコンのソフトをよく売り買いしていました。というのも同級生たちは、いろいろなファミコンソフトを持っており、学校で貸し借りをしていたのです。

 借りたものを返さないなどのトラブルが頻出したことから、とうとう学校側ではファミコンのソフトに名前を書かせるようになったくらいです。

 実家が貧乏だったこともあり、私自身はファミコンソフトをほとんど買ってもらえませんでした。手元にあるお金は、ほぼすべて定額貯金に回していましたし、ファミコンのソフトを買うために定額貯金を下ろすという選択肢はありませんでした。

ファミコンソフトで差益を得た小4の夏

 欲しいファミコンソフトは、自ら稼いで買うしかありません。そこで取り組んだのが、アービトラージだったのです。

 ファミコンが大ブームになると、街中に中古ショップが次から次に登場しました。そんなお店を巡っているうちに、ある店では3000円で売っているファミコンソフトが、別の店では2500円で売られていることに気づきます。

 そこで安い店でファミコンソフトを買い、より高く買い取ってくれる店に売って、差額(利ざや)を稼いだのです。

 小学4年生の夏休みには、ファミコンショップを自転車で20軒以上回り、お店の買取価格や販売価格をすべて把握し、1日で1万4000円のサヤ取りに成功しました。小学4年生にとっては大金ですから、今でも忘れられない成功体験となっています。

専業投資家として再び「アービトラージ」へ

 専門学校を卒業してから専業投資家として一本立ちできるまでの間、私はしばらく小学生時代の体験を活かしたアービトラージに励んでいました。

 さすがにファミコンの人気は過去のものになっていましたから、対象としたのはお菓子のオマケの食玩や、カードゲームのレアカードなど。

 フリーマーケットなどで高く売れそうなものをいち早く見つけて安く仕入れ、高く買ってくれるコレクターたちに売却していました。その差額で生活費を稼いでいたのです。

 また、不景気になると節約のために金券ショップが流行るようになりました。金券も地域によって価格差があったので、安い地域で買い、高く売れる地域のお店に持って行って転売していました。

バリュー株投資との運命的な出合い

 その後、バリュー株投資に出合い、資産を順調に増やすことができました。でも、振り返ってみると、バリュー株投資とは、私が小学生から続けていたアービトラージを、株式投資の世界でやっているようなものです。

 だからこそ、バリュー株投資は、すっと理解できたのです。慣れ親しんだ手法だったから、良い成績が出せたとも言えます。

 その意味で、アービトラージで過ごした数年間も、私の投資人生にとって無駄な時間ではなかったのです。

※本稿は、『貯金40万円が株式投資で4億円』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。