
富裕層ではない一般庶民にも「貯蓄から投資へ」という動きが広がりつつある昨今。ベストセラー『節約の王道』の著者である林望氏によれば、そんな時代においても投資は庶民が安易に手を出して良いものではないのだという。その理由とは?※本稿は、林 望『節約を楽しむ あえて今、現金主義の理由』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。
なぜ銀行はNISAを
しきりに勧めてくるのか
たとえば、銀行を筆頭に金融機関がしきりに勧めるNISAみたいなものをやったとしても、自分のお金がどのように流れていっているか、誰も知らないわけです。それゆえ、「知らない人に大切な資産を預けるなんてことは、ぜひやめたほうがいい」と、私は言いたいのです。
銀行が事実上ゼロに等しい低金利ですから、そこに預金をただ置いておくよりは、NISAに投資してはどうですかと勧めてくる。そうすると、「10年後には2割増しになりますよ」などと言うわけです。
私などはへそ曲がりですから、もしそんな親切なる運用を銀行がしてくれるなら、人から預った預金を、そのように有利な運用をして、史上最高の黒字なんてことをいばっていないで、せいぜい利子として顧客に還元したらどんなものでしょうか……と、そう思ってしまいます。
そこで冷静になって考えなければいけません。小口の手もと金から始められると言うけれど、では100万円を元手にしたとする。それを預けたとして、数年後にいくらか利益が出たとしてもせいぜい数万円くらいのものでしょう。なにもせずに20万も儲かるとは到底思えません。