前職調査には2種類あり、社員の退職理由は個人情報に該当する
○ 前職調査とは、企業が採用候補者(以下「候補者」)の過去の職歴や勤務態度、人柄などを確認するために行う調査のことをいい、会社に適した人材かどうかの判断材料にする。
○ 候補者に対して企業が行う調査には、バックグラウンドチェック(会社の人事スタッフや会社が契約した外部の調査機関により、履歴書や職務経歴書の経歴に相違がないか、反社の有無などを確認すること)、リファレンスチェック(前職の同僚や上司などに仕事ぶりや人柄などを確認すること)がある。
○ バックグラウンドチェックとリファレンスチェックの両方を実施することは可能である。
「乙社がA課長に問い合わせた内容は、Cさんの個人情報に該当します。Cさんの同意がなく返答した場合、甲社が個人情報保護違反に問われる可能性があるので注意が必要です。その点で、A課長のとっさの判断は正しかったですね」
(1) 個人情報保護法上での「個人情報」とは、単独もしくは組み合わせにより生存する個人を識別できる情報であり、氏名、住所、顔写真、メールアドレスなどの他、マイナンバーなどの個人識別符号なども含まれる。
(2)元社員の氏名、生年月日、在籍期間、職務内容、退職理由などは(1)の定義により「個人情報」に該当する。そのため、これらの情報を第三者に提供する際には、あらかじめ本人の同意が必要である。(個人情報保護法第27条)
「Eさん、乙社への対応方法について具体的な方法を教えてください」
○ Cからの同意を得ていないのに情報を開示することや同意を得た内容以外の情報を開示することは、甲社が個人情報保護違反に抵触する可能性があるので注意すること。
○ Cの同意があったとしても、乙社の求めに応じる義務はない。応じるか応じないかは甲社で判断してよい。
企業が前職調査を行う場合の注意点とは?
「乙社への対応は、C君の将来がかかっていることなので慎重に検討します。ところでもう一つの質問ですが、当社が前職調査をする場合、どのようなことに注意したらいいですか?」
「バックグラウンドチェックは金融機関や警備会社などで行っているところもありますが、日本企業の場合、全体的に多くの企業が採用しているとまではいえません」
「どうしてですか?」
「前にも説明した通り、調査の内容によっては(同意なく候補者の自宅の近隣住民に聞き込みをするなど)個人情報保護法に抵触する恐れがあるためです。逆に、リファレンスチェックを採用する企業は増えています」