当然、私のボイトレに来る人たちも、「話す前に息をしてくださいね」と教えるととまどいます。
十分に息を吸わずに声を出すのは、車にガソリンをほとんど入れずに走り出すようなもの。
声の小さい人、通らない人はまず、目の前にある「自然の恵み」=「空気」をいつもより3~5倍吸うことを心がけましょう。それだけで声はよくなります。
うまく息が吸えない人という人は、次の例文を歌わずに読んでみてください。
■さいた さいた チューリップの花が
いつも通りの声ですね。
今度は、これを歌詞として歌ってみてください。
すると、「さいた」の「さ」と歌い出す前に、自然と「スーッ」と息を吸ったのではないでしょうか?
この感じで息を吸って話をするだけでも、「伝わる声」に近づきます。
このように、無意識にしていた呼吸を意識的に整えることが、「伝わる声」への第1歩なのです。
人に伝わる地声は
どんなときに出る?
それでは、いよいよあなた自身の「信頼される地声」をつくります。
まずは「地声」を見つけましょう。ボイストレーニングで私がこう「地声」をすすめると、「地声でいいんですか?」と生徒さんに驚かれます。くり返しますが、地声こそ「伝わる声」の土台です。
「地声」とは、親しい友人や家族と話すときに、知らず知らず使っているニュートラルな声のこと。たとえば、いびきやあくび、赤ちゃんの「あー」といった音も「地声」に近いものです。
「地声」は通常、少し低めであることが多いですが、この低い声が人に暗い印象を与えるわけではありません。
実は、地声が暗かったり、不機嫌に聞こえるのは、息(呼吸)の量が不足しているためです。エネルギー(呼吸)不足の声は暗く聞こえがちなのです。
逆に、呼吸の量が多い人は、声にも自然とエネルギーがこもり、自信があるように見えます。
多くの人がビジネスや特別な場面では「よそゆき声」を使っていて、「地声」を使っては失礼だと思っている人がほとんどです。
そのため、多くの人は自分の「地声」がどれなのかわからず、「地声を出して」と言われても、すぐには出せません。
では、実際に自分の「地声」を見つけてみましょう。