ぐうの音も出ない
さすが次郎!な弁明

 外国製の道具であるカメラを使っていることを咎めるのだが、次郎は、同盟国のドイツ製であると弁解する。それではぐうの音も出ないかと思えば、負けず嫌いの民江は、兵隊さんがお国ために戦っているのに遊んでいることがせいたくだと譲らない。次郎はなおも穏やかに抵抗。民江たちの写真も撮ると、彼女たちも陥落してしまった。

 次郎は朝田家にも婦人会にもうまく溶け込んでいく。

 楽しいひとときを過ごし、のぶと次郎は高知へと戻る。帰りの列車で、のぶは、戦争が終わったら楽しい授業をしたり、次郎といろいろな国に行ったりしたいと夢を語る。

 次郎といっしょにいるときののぶは、「はちきん」でも「愛国のかがみ」でもなく、落ち着いた人物になっている。次郎と出会って学ぶことが多いのだろう。

 次郎が再び、出発する日、次郎はカメラをのぶに預けていく。実は、船が軍用の輸送船に改修することになったからだった。今度船に乗ったら戻って来ることができるかわからないと覚悟しているのだ。

「僕はこの戦争に勝てるとは思わん」と冷静な次郎に、のぶは「愛国のかがみ」の顔を出す。「そんなこと思ってはいけません」「この戦争が終わるときは日本が勝つときです」と勇ましいのぶを、生徒の気持ちが少しわかったと次郎は微笑み、そっと抱きしめる。まるで彼女の火を鎮めるように。

 きっと次郎は「愛国のかがみ」と化したのぶに心を痛めているのだが、そんな彼女の気持ちを受け止める。そんなところも含めて、次郎はのぶを愛している。いやあ、のぶは実にいい伴侶と出会ったものだ。のぶには次郎のような少し大人な人が合っていると思う。

 出発の日、次郎に写真を撮ってと言われたのぶだが、帰ってきたら撮ると言う。その気持ちもわかるけれど、ここは撮ろうよ。のぶに合わせて敬礼する次郎。ほんとうにいい人である。

 次郎の写真を決して撮らないのぶに、彼女の勘違いや頑なさが滲んで胸が痛くなる。

 のぶと次郎の関係性には力を入れて脚本を書いているような気がする。

「帰ってきたら撮る」…のぶが最後に夫の写真を撮らなかった“ある朝の選択”【あんぱん第48回レビュー】

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