文章でほめるのがうまい人は、これを大切にしている
20万部のベストセラー、200冊の書籍を手がけてきた編集者・庄子錬氏。NewsPicks、noteで大バズりした「感じのいい人」の文章術を書き下ろした書籍『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』(ダイヤモンド社)を上梓しました。
実は、周囲から「仕事ができる」「印象がいい」「信頼できる」と思われている人の文章には、ある共通点があります。本書では、1000人の調査と著者の10年以上にわたる編集経験から、「いまの時代に求められる、どんなシーンでも感じよく伝わる書き方」をわかりやすくお伝えしています。

【なるほど!】「感じがいい人」に学ぶ、人をほめるときの4つのコツPhoto: Adobe Stock

語彙力がなくてもほめるのがうまくなる4つのコツ

仕事でもプライベートでも、相手をほめたい(賞賛したい)のにうまい言葉が出てこないことってよくありますよね。

会話であれば「どうやってあんなに高い目標を達成したんですか?」みたいに相手に話を振ることもできますけど、メールやチャット、SNSだと文章化して一方的に気持ちを伝えなくちゃならない。でもそれが難しいんですよね。

そこで今回は「文章におけるほめ方のコツ」について解説します。

第一に、スピード感。これは意外と大事なポイントです。

めでたいことって鮮魚のように旬が命です。ほめ(賞賛)が生まれる場のエネルギーは感情の産物なので、盛り上がりから乗り遅れるほど、ほめ言葉に対するハードルが上がってしまいます。

たとえば、営業チームのメンバーから受注の報告があったとき。

直後であれば「すごい!」「さすが!」「おめでとうございます!」という一言でも本人にとってはうれしいものですし、「すごすぎワロタ」みたいに多少のおふざけもまあ許されると思います。

でもそれが数時間経ち、日をまたぐと、そんな軽々しい一言では済ませにくい雰囲気になります。

とはいえなにも言わないままだと印象が悪くなりそうだし……と悩んだあげく、「ええい、とりあえずスタンプだけ付けておこう!」みたいに投げやりな対応をした経験はありませんか。

ほめるときは波に乗り遅れない。まずはこれが鉄則です。

第二に、自分の感覚を伝える

相手のどこがすごいかを分析してほめるのは、かなり難易度が高いことです。勘の鋭い人なら「ここをほめたら相手もうれしいだろうな」と読みとって適切な言葉に置き換えられたりするのですが、それも簡単ではありません。

でも、「自分がどう感じたか」「自分はどう生かそうと思うか」という切り口なら、比較的言葉が出てきやすいはずです。
簡単な表現なら「すごく勇気づけられました!」「自分ごとのようにうれしいです!」「私も早速やってみようと思います」でもいいでしょう。

さらにこのとき、「フィジカルの反応」を付け加えると、より本音でほめている感じが出ます。
たとえば、「すごすぎて口がぽかんとなりました」「なんかワインが飲みたくなってきました(笑)」など。生理現象や五感とひもづけると、臨場感のある、かつ独自性のあるほめ言葉になります。

第三は「キョロキョロ感」を出す。
言葉が出てこないなら、素直に「うまく言葉にできず恐縮なのですが」「語彙が乏しくてすみません…」と書いてしまう。こうすると相手としても「一生懸命伝えようとしてくれているんだな」と好感を抱くものです。

人間って不思議なもので、うまい表現よりも「うまく伝えようと頑張ってくれた」ことのほうが心に響くことがあります。

たとえばプレゼントをもらったときって、プレゼントそのものもうれしいですけど、ときにはそれ以上に「自分のために時間を使って準備してくれた」こと自体がうれしくなりますよね。それと似ています。
「自分もあなたと一緒に喜びたい」という姿勢そのものが、ときに最高のほめ言葉になるんです。

最後は、テンションを合わせる。

文章って顔が見えない分、相手の感情がわかりません。めでたいことがあったときも、同じように喜んでくれているのか、興味がなさそうにしているのか、よくわからず不安に思うものです。

だから相手をほめるときには、ややオーバー気味にリアクションするくらいがちょうどいい。
「すごいですね」ではなく「うわー、すごいですね!」、「素晴らしいと思います」ではなく「素晴らしいですね!!」にする。
といっても、これは短文の場合のリアクションなので、ある程度まとまった文章を書く場合は、むしろ記号を使わないほうが説得力が出るはずです。

あとこれはぼくだけかもしれませんが、自分のめでたいことがあったときに絵文字やスタンプだけの反応だと少しさみしく感じます。

ノーリアクションよりはうれしいのですが、自分だけ喜んでいて周りが「すごい!」みたいなスタンプだけだと、すべった感じもします。言わなきゃよかったかなって思います。

でもそのなかで「すごいですね! おめでとうございます!」ときちんと言葉にして伝えてくれる人がいると、やっぱりその人に対してはポジティブな印象を抱くものです。

絵文字やスタンプだけでコミュニケーションできる時代だからこそ、言葉にしてくれるだけでもうれしい。そう言えるのかもしれません。

庄子 錬(しょうじ・れん)
1988年東京都生まれ。編集者。経営者専門の出版プロデューサー。株式会社エニーソウル代表取締役。手がけた本は200冊以上、『バナナの魅力を100文字で伝えてください』(22万部)など10万部以上のベストセラーを多数担当。編集プロダクションでのギャル誌編集からキャリアをスタート。その後、出版社2社で書籍編集に従事したのち、PwC Japan合同会社に転じてコンテンツマーケティングを担当。2024年に独立。NewsPicksとnoteで文章術をテーマに発信し、NewsPicksでは「2024年、読者から最も支持を集めたトピックス記事」第1位、noteでは「今年、編集部で話題になった記事10選」に選ばれた。企業向けのライティング・編集研修も手がける。趣味はジャズ・ブルーズギター、海外旅行(40カ国)、バスケットボール観戦。

※この連載では、『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』庄子 錬(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集して掲載します。