「逃げ回ってもいい、ひきょうだと思われてもいい」→戦時下に駆けつけた登美子(松嶋菜々子)が息子に託した、“らしくない”禁句〈吉田鋼太郎コメント付き〉【あんぱん第50回レビュー】

嵩、ついに兵隊になる
早くも八木(妻夫木聡)が登場

 こうして嵩は出征し、同級生と再会し、あれよあれよという間に、高知連隊から小倉連隊に転属になり、そこで軍隊の先輩・八木(妻夫木聡)が登場する。展開早い。

 小倉は勇猛果敢で知られると語り(林田理沙)が語る。八木もこわそう。どうなる、嵩。

 さて。見送りのとき、釜次(吉田鋼太郎)も、立派に戦ってこいと言っていた。以前、吉田鋼太郎にインタビューしたとき、こんなことを聞いた。

――戦争シーンが長いですが、吉田さんは演じていていかがでしたか。

(吉田鋼太郎さん)「世界各地で戦争が起こっているいま、ドラマで戦争というものにこれだけしっかり向き合っている中園さんはすごいと感じています。

 日本が戦争をしていた時代、日本人は一丸となって戦うべきだと考える人と、こんなことはおかしいという人とに分かれていて、朝田家の中でも意見が分かれます。古い人間である釜次やくらは盲目的にお国のために頑張らなければいけないという立場を取るし、孫の蘭子はこれではいけない。こんなことはするべきじゃないとはっきり言います。

 団子屋の桂万平役の小倉蒼蛙さんがお話好きで、撮影の合間にいろいろなお話をしてくれるのですが、木下恵介監督の話が印象に残っています。

 戦争で死んだ息子の知らせを母が受け取って泣くシーンで、当時、映画会社の方が「戦争で息子が死んだ知らせを受け取って泣く母親はおらん」と言ったそうなんです。でも木下さんは「いや、泣いた母親もいるはずです」と返したと。良い話だなと思って。

 蘭子も戦争に反対して、戦時の兵隊たちに支給する乾パン作りを朝田家で頼まれても、作りたくないと拒否する。ヤムおじさんも作らないと言う。

 そういうストーリーの中の随所に戦争に対する中園さんの思いが入っていると感じています」

 当時は誰もがお国のために戦うことが正しいと思っていたと言われるが、見送るときに泣いたり止めたりする母もきっといただろう。そう思わせる回だった。

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