「最後だったけど、言わなかった」…登美子(松嶋菜々子)が嵩に伝えなかった“思い”の正体【あんぱん第49回レビュー】『あんぱん』第49回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第49回(2025年6月5日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)

戦争に駆り出される人が
増えてきた

 赤い紙だとわかりやすいが電報で、何かと思ったら、嵩(北村匠海)に赤紙が届いたという知らせの電報だった。まわりくどい。

 嵩にもお呼びがかかったのだ。

 戦争に駆り出される人が増えている。

 御免与町ではのぶ(今田美桜)の生徒のひとり・紀子(木村日鞠)の兄・泰平(成田次郎)にも召集令状が来ていた。

「それはご立派なことやね」とのぶは言うしかない。子どもたちは不安そうだ。

 ちょっと前まであんなに張り切って兵隊さんに憧れていた生徒たちが、にわかに不安にかられているのはどうしたことか。のぶの軍国教育が行き届いていないと上から怒られてしまいそう。

 最初は勝つ気満々で、いざとなれば戦場に行こうと思っていた子どもたちも、いざ周囲からどんどん兵隊に出ていくようになって、豪(細田佳央太)のように亡くなった人も増えてきたら腰が引けてきたというところであろうか。

 この頃の戦争の状況は自分で調べてね、ということなのか、ドラマでほとんど描かれていない。そのため、日本と世界では何が起こっていて、何が国民の自信につながって何が不安に転じているのは明言されない。