
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第50回(2025年6月6日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)
登美子(松嶋菜々子)が
御免与町に現れた!
「死んだらだめよ、生きるのよ」
登美子(松嶋菜々子)がついにストレートに本音を言った。
それに続いて、のぶ(今田美桜)も。
「死んだら承知せんき」
おおお。これまで素直になれなかったふたりの本音。それだけ嵩(北村匠海)の出征は耐え難いものだったのだろう。
第10週のサブタイトル「生きろ」の意味が強く胸に迫った。
第49回で、嵩は登美子に「戦争なんて無理に決まっているでしょう」と言われた。それは登美子なりの心配の意味だったと察した視聴者も少なくなかっただろう。だがそれは嵩の期待したものではなかった。
第50回、高知に戻ってきた嵩は、のぶと会う。丸刈りになった嵩に、のぶは状況を察し「おめでとうございます」と言う。
のぶは淡々と「お国のために立派なご奉公を」としか言えない。第49回で次郎(中島歩)に「どうか生きてもんてきて」と言えなかった後悔を語ったにもかかわらず、幼馴染にもやっぱりそれが言えないのだ。
嵩は嵩で、軍隊に向いていないと先生にも言われた。のぶもそう思っているのだろうとふる。母に言われたとは言わない。しかも「向いていない」と言われて怒っていたのに。どうせ向いていないと思っているのだろうという自虐なのか、「お国のためにご奉公を」言われることに辟易としているからなのか。
嵩のなかでいろいろ複雑な思いが駆け巡っているのだと思う。母にものぶにも甘えているのだとも思うが。