
ある日本人作家の小説が海外で大変な人気となっている。イギリスでは日本国内での販売部数を超える40万部を突破し、複数の賞を受賞。各地で行われている講演会は大賑わいという。日本での刊行は8年前の2017年。この小説の魅力はどこにあるのか。(フリーライター 鎌田和歌)
海外でこんなに人気が出るとは…
書いた本人もびっくり
2025年5月、作家・柚木麻子さんの小説『BUTTER』が英国の文学賞「ブリティッシュ・ブック・アワード」のデビュー・フィクション部門を受賞した。
『BUTTER』はこれ以外にも、各書店が主催し読者が選ぶ「2024 Books My Bag Readers Awards」や、大手書店チェーンWasterstonesが主催する「Wasterstones Book of the Year 2024」で受賞しており、3冠となった。
イギリスでの販売部数は40万部を超えており、これは日本国内での30万部を大きく上回る。イギリス以外にもインド、香港など世界各地でオーサーズツアーが行われ、Instagramでその様子を見ると、大きなホールが満員の盛況ぶりである。
5月に公開されたインタビューの中で、柚木さん自身がその反響について「生きているうちに、どれだけ努力をしても日本でこんなに人気が出ることはないだろう、と思うほどでした」と語っている。
日本国内では長らく「文学作品が売れなくなった」と言われる状況が続き、大ヒットは一部の特定ジャンルや作家に偏ると分析されている。異例とも言える海外での大ヒットの理由はどこにあるのか。