ウクライナがロシアの戦略爆撃機を標的に実施した大規模なドローン(無人機)攻撃の背後には、ウクライナ保安局(SBU)の存在があった。イスラエルのモサドなどトップクラスの情報機関に神秘性をもたらしてきたような華々しい作戦を成功させた。SBUには長年、腐敗がはびこり、スパイが暗躍し、治安上の脅威よりも政敵の追及に力を入れているとの批判がつきまとってきた。だがロシアとの3年に及ぶ戦争の中で、ウクライナの攻勢の先鋒(せんぽう)となる存在へと変貌を遂げた。SBUは、長官を務めるバシーリ・マリュク中将(42)の下でロシアとの戦いを続けてきた。スパイと疑われる人物やロシア軍将校を殺害し、長距離ドローンでロシアの軍需工場や石油施設を攻撃した。また、海上ドローンを配備し、ロシアの黒海艦隊を同国占領下のクリミアからほぼ撤退させるなど、海戦に画期的な変化をもたらした。