「カリー」から垣間見えるコメダの狙い

一方、インド本場のカレーは、地域や家庭によって使用するスパイスが多種多様であり、ルーは用いない。油でスパイスを炒めて香りを引き出し、そこに具材を加えて煮込むのが基本的な調理法である。小麦粉を使わないため、仕上がりは比較的さらりとしていることが多い。また、宗教上の理由から肉食をしない人々も多く、豆類や野菜を中心としたカレーも豊富に存在する。
コメダが「カレー」ではなく「カリー」という表記を採用しているのは、日本で一般的に普及しているイギリス経由のカレーとは一線を画し、より本場インドに近いものを目指しているという意思表示と解釈できうる。実際にメニューにナンが含まれている点も、その方向性を補強している。
日本のカレーライスが福神漬けやらっきょうを添えて白米で食されるのが一般的であるのに対し、インドではナンやチャパティといったパン類と共に食べられることが多い。コメダの「カリー祭り」は、単なる季節限定メニューという枠を超え、日本のカレー文化の多様性や奥深さに触れる機会を提供しているのかもしれない。
コメダが「カリー祭り」と銘打っているのは、単に語感の目新しさを狙ったものではなく、提供する料理が日本の一般的なカレーとは異なる、より本格的なインド料理に近いものであることを強調する意図があると考えられる。実際に、メニューにナンが含まれていることや、タンドリーチキンといったインド料理の定番がラインナップされていることからも、本格志向がうかがえる。
ココイチは危機感を感じた方がいい!
奇しくも同時期に、日本最大のカレーチェーンであるCoCo壱番屋(以下、ココイチ)は、「ホロ肉ドカンとガーリック&ペッパーカレー(LEVEL2)」(税込2220円)を市場に投入している。既存の「カレー」という概念や、チェーンストアが提供する価格帯の常識を破壊するような挑戦的なメニューだ。
この動きは、ココイチがトッピングの豊富さや辛さの段階的カスタマイズといった従来から持つ強みをさらに先鋭化させ、高価格帯・高付加価値化によって新たな顧客層を開拓し、話題性を喚起しようとする明確な戦略の表れと見ることができる。