丁寧すぎて逆にわかりづらい文章を書く相手への対処法
20万部のベストセラー、200冊の書籍を手がけてきた編集者・庄子錬氏。NewsPicks、noteで大バズりした「感じのいい人」の文章術を書き下ろした書籍『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか？』（ダイヤモンド社）を上梓しました。
実は、周囲から「仕事ができる」「印象がいい」「信頼できる」と思われている人の文章には、ある共通点があります。本書では、1000人の調査と著者の10年以上にわたる編集経験から、「いまの時代に求められる、どんなシーンでも感じよく伝わる書き方」をわかりやすくお伝えしています。
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「察してさん」には「悪文シェア作戦」
テキストコミュニケーションや文章表現で相手を不快にさせてしまうパターンの1つとして「察してさん」問題があります。
「察してさん」とは、ひとことで言えば、相手のことを考えすぎるあまり、かえって文章をわかりにくくしてしまう人のこと。前回の記事では、よく見かける「察してさん」の特徴を紹介しました。
ただ、これを読んで「自分もやりがちだったな。気をつけなくちゃ」と思った人は解決したようなものなのですが、なかには「身近なところに『察してさん』がいて困っている」という方もいらっしゃると思います。
そういう人はどうすればよいのでしょうか。
ぼくは編集者という立場上、ライターさんの文章にあれこれ感想を言って、ときには大がかりな修正をしてもらっています。
その経験のなかで、ライターさんの執筆スキルがぐんと伸びるのは、あるタイミングだと感じています。
それは、第三者の原稿チェック。ほかの人の文章に手を入れることで、自身の文章のクセを客観視してもらうということです。
「察してさん」は本来、論理的に考える力も文章で表現する力も人並み以上に持ち合わせていて、けれども「相手を傷つけないように」「話が長くなるのは申し訳ないから、余分な情報はカットして簡潔に」などと配慮した結果、わかりづらい文章を書いてしまっているのだと思います。
だから「悪気はなく、察したうえでの表現の方向性が違うだけ」ともいえるのではないでしょうか。
そういう意味で、ほかの人が書いたわかりにくい文章を「察してさん」に見せて、「これ、どういう意味でしょうね？」と聞いてみるのは有効だと思います。
あえてまわりくどい文章を作成して「うまく書けないんですけど、どう修正すればいいですかね？」と聞いてみてもいいでしょう。
悪文の編集を通して自身の悪文に気づいてもらう。悪文シェア作戦です。
時間はかかるかもしれませんが、これが根本的な解決につながる方法だと思っています。
ちなみに、このときちょっとしたコツがあります。
単に編集してもらうのではなく、相談したこちら側も「たしかにここはわかりづらかったですよね」と共感したり、「ここってこう変えたほうがもっと読みやすくなりますかね？」と提案したりするのです。
こうすることで「婉曲表現は必ずしも配慮につながらない」という気づきが生まれたり、「はっきり書いたほうがむしろ親切なのかもしれない」という発見につながったりします。
本来もち合わせている「相手を思いやる気持ち」が、「相手を迷わせない明快な文章」という形で表現されるようになるわけです。
「察してさん」に困っているなら、一方的な指摘や批判ではなく、いっしょに文章をよくしていこうという姿勢が解決につながると思います。
1988年東京都生まれ。編集者。経営者専門の出版プロデューサー。株式会社エニーソウル代表取締役。手がけた本は200冊以上、『バナナの魅力を100文字で伝えてください』（22万部）など10万部以上のベストセラーを多数担当。編集プロダクションでのギャル誌編集からキャリアをスタート。その後、出版社2社で書籍編集に従事したのち、PwC Japan合同会社に転じてコンテンツマーケティングを担当。2024年に独立。NewsPicksとnoteで文章術をテーマに発信し、NewsPicksでは「2024年、読者から最も支持を集めたトピックス記事」第1位、noteでは「今年、編集部で話題になった記事10選」に選ばれた。企業向けのライティング・編集研修も手がける。趣味はジャズ・ブルーズギター、海外旅行（40カ国）、バスケットボール観戦。
※この連載では、『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか？』庄子 錬（ダイヤモンド社）より一部を抜粋・編集して掲載します。
