米中貿易「休戦」、中国のレアアース支配が決め手レアアースはさまざまな技術に欠かせない Photo: Katie Hayes Luke for WSJ

 中国は電気自動車(EV)やジェット戦闘機などのハイテク製品に欠かせない鉱物の供給を握ることで、米国との貿易交渉で強力な切り札を手にした。

 ドナルド・トランプ米大統領は10日、米中が貿易休戦の条件で合意したと明らかにした。交渉は今週ロンドンで2日にわたって行われ、中国が輸出するレアアース(希土類)磁石が焦点だった。レアアース磁石は硬貨ほどの大きさしかないが、自動車モーターや産業用ロボット、ミサイル誘導システムを動かすのに欠かせない。

 トランプ氏と習近平・中国国家主席が合意内容を承認すれば、米国が一部の輸出規制を解除する代わりに、レアアースの供給が加速することになる。ハワード・ラトニック米商務長官はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、トランプ氏は11日か12日にも合意を承認するとの見通しを示した。

 トランプ氏が中国製品に34%の追加関税を課すと、中国は4月にレアアース輸出管理制度を導入した。今回の合意では、中国はこれを維持できるとみられる。つまり将来再び供給が制限される可能性がある。事情に詳しい関係者によると、米企業に対する中国のレアアース輸出許可は 6カ月の期限が付く見通し 。

「中国は影響力を維持したいと考えるだろう」。米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の重要鉱物安全保障プログラムのディレクター、グレースリン・バスカラン氏はこう指摘した。「合意は破棄される可能性があるため、(中国が重要鉱物を支配していることで)米企業はじかにリスクにさらされている」