もちろん、それ自体が悪いわけではありませんが、気をつけなければ「私はこうだから無理」「あの人はこうだから合わない」などと、自他の“可能性を閉ざす”方向へ突き進むリスクがあります。

 性格診断や自己分析ツールは、適切に使えば自分自身を理解するための優れた手がかりになります。しかし、それが「自己限定」の材料になってしまっては本末転倒です。

 現代人は、変化の激しい環境の中で、多様な役割を求められています。昨日まで苦手だったことが、明日の武器になる可能性は誰にでもあるので、自分のタイプを一つに決めつけることは、その可能性を閉ざすことにもつながりかねません。

“型”を越えて、自分も他人も見つめ直そう

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 性格診断やタイプ分類は、あくまで参考情報であって、決定事項ではありません。MBTIにしても、今の自分の傾向を知るための一つの視点であり、人生のステージが変われば、人間の考え方も、行動パターンも自然と変容していきます。

 人を安易にラベリングすることは、時に他人への差別や偏見、さらにはいじめや孤立感、妬みや嫉みにもつながりかねません。「自分はこういう性格だから、あの人とは合わないんだ」などと思い込む、固定観念に縛られた人間関係ほど息苦しいものはありません。

 だからこそ、性格診断ツールとは、気軽な感覚で付き合っていきたいものです。自己理解のきっかけとしては有効でも、自分を規定する“枠”にしてはいけません。オンリーワンの自分、そして相手の個性を見る視点を、常に持ち続けることが大切です。