AIがソフトウェアの枠を飛び出し、現実世界で自律的に活動する「フィジカルAI」の時代が幕を開けようとしている。その象徴が、自動運転タクシーのサービス開始を予定しているイーロン・マスク氏率いるテスラだ。そして、このロボット社会を技術的に支えるのが、“AI向け半導体”で市場を席巻するエヌビディアと、“未来予測技術”に定評があるパランティア・テクノロジーズだ。自律的に動くロボットを実現するフィジカルAI時代の到来は、私たちの労働環境から交通システムまで、日常を大きく変える可能性がある。このフィジカルAI革命をリードする3社の将来性、また「投資先」としての評価について、米国株の専門家に話を聞いた。(今村光博、ダイヤモンド・ザイ編集部)
「まさか、こんなに早く来るなんて!」
ロボットが8割働く工場が示す未来

Photo by TESLA
EV大手テスラのイーロン・マスクCEOは自動運転タクシー「ロボタクシー」の走行を2025年6月中に開始する方針を明らかにした。いよいよ、SF映画で描かれてきたようなロボットが人間に代わって労働を担う未来が、空想ではなく現実のものとなりつつある。
その到来を牽引するのが半導体大手・エヌビディアのジェンスン・フアンCEOが推進する「フィジカルAI」だ。これは、ロボットなどの物理的な制御を担うAIを指す。ジェンスン・フアン氏は、この分野が将来的に50兆ドル(約7000兆円)規模の巨大市場へと成長する可能性があるとみている。
米国のハイテク株に詳しい、むさし証券の杉山武史氏は「これまでオンライン上でデータ分析などを行っていたAIが、今後はロボットの行動や管理を担う領域へと進化しつつあります」と話す。
こうした中、ヒト型ロボットが本格的な労働力として活躍する日も数十年先ではなくなってきた。わずか数年のうちに訪れる可能性があるという。その可能性を示す好例が、エヌビディアと提携する台湾の電子機器大手・鴻海(ホンハイ)精密工業の取り組みである。