「全社員に買って配りました」
「入社する人への課題図書にしています」

そんな声が多数寄せられているのが、書籍『ベンチャーの作法 -「結果がすべて」の世界で速さと成果を両取りする仕事術』です。1.1万人以上のキャリア相談、4000社以上の採用支援の経験がある高野秀敏さんが、ベンチャー流の「結果を出す働き方」をまとめました。
シーリングライト一体型プロジェクター「popIn Aladdin」や、世界的ヒットとなった「スイカゲーム」の開発者であり、現在はヘルスケアベンチャーに挑む起業家・程涛さんも、本書に共感した読者のひとり。同氏からお聞きしたベンチャー企業のリアルや、『ベンチャーの作法』からの気づきを、数回の記事に分けて紹介します(ダイヤモンド社書籍編集局)。

「全社員に読ませたい!」――世界的ヒット「スイカゲーム」の開発者が惚れ込んだ“ビジネス書”とは?Photo: Koshiro K/Adobe Stock

大学院で起業し、世界的起業に売却

――書籍『ベンチャーの作法』をお読みくださったと聞きました。著者の高野さんとは以前からお知り合いだったのでしょうか?

 たしか初めてお会いしたのは10年ほど前でした。UTEC(東京大学エッジキャピタルパートナーズ)という東大発のベンチャーキャピタルが主催していたHR系のイベントでお会いした気がします。

 スタートアップやベンチャーのCXOクラス、HR領域の関係者が対象だったので、高野さんもゲストとして招かれていたんです。

――当時はどのような事業を手掛けていたのですか?

 その頃は、1社目に立ち上げたのは「popIn(ポップイン)」という会社を経営していました。2008年に、僕が東京大学の大学院で修士2年生のときに立ち上げたインターネット事業の会社です。

 その後、何度かのピボットを経て、2014年にローンチした広告配信プラットフォーム「popIn Discovery」によって急成長し、翌年に中国の検索大手「Baidu(バイドゥ)」にバイアウトしました。

世界的ヒットの「スイカゲーム」が誕生したきっかけ

 その後はpopInの社内起業で、「popIn Aladdin」という商品を開発しました。これはシーリングライトとスピーカー、プロジェクターが一体になっていて、壁に映像を投影してみんなで楽しめる家庭用デバイスです。

 自宅で家族と過ごす時間を楽しむために作ったもので、そこにオリジナルコンテンツも搭載することになって作ったのが「スイカゲーム」でした。

――社会現象ともいえる大ブームになりましたよね。

「popIn Aladdin」のユーザーに好評だったので、この商品をより多くの人に知ってもらえるきっかけになるんじゃないかと思ってNintendo Switch版『スイカゲーム』を開発したところ、ちょっと想定外にバズってしまいました。

 結果的には国内1100万ダウンロードを超えるヒットになりました。でも、もともとは僕の4歳の子どものために作ったものなんですよ。子どもでも大人に勝てるようなゲームがあれば、家族との良い思い出になるかなと思って。

次の挑戦は「健康」をもっと簡単に

 そして現在は、東京大学構内にオフィスを構えるヘルスケアベンチャー「issin(イッシン)」を経営しています。

 僕自身、30代に入ってから健康診断の結果がどんどん悪くなっていきました。働くほどに健康管理が後回しになっていたんです。そこで、「いかに健康管理を簡単にできるか」をミッションに掲げました。

 健康管理の課題って、モチベーションが高いときにしか継続できないことなんですよ。でも、それを毎日の習慣に組み込めたら、自然に続けられるはず。

 たとえば、バスマットと体重計が一体化していれば、お風呂上がりに無意識のうちに体重を測れる。そう考えた開発した「スマートバスマット」は、現在は国内で8万人以上にご利用いただいています。

 他にも、装着するだけで睡眠やストレス、活動量を記録できる「スマートリング」も提供しています。この2つがあれば、予防に必要なデータ――食事、運動、睡眠、ストレス、体重、体組成――すべてをカバーできます。

 目指しているのは、「生命力あふれる世界」です。朝起きた瞬間からエネルギッシュで、自分のやりたいことをパワフルに実行できる。その状態こそ、人生の充実そのものだと思うんです。

多様化していく社員をまとめるために必要だった「1冊」

 弊社は創業から3~4年ほどで、現在、正社員が約15名、業務委託も含めると20~30名の体制です。1社目からの仲間もいますが、全員が創業メンバーというわけではなく、事業を拡大するにあたって徐々に採用を進めています。

 その中には当然、ベンチャー未経験の人もいます。多様なバックグラウンドを持つ人材をまとめることの大変さを実感しているところです。

 だからこそ、書籍『ベンチャーの作法』に惹かれました。ベンチャーを経営してきた僕から見ても、「こういうマインドで、こういう覚悟で働いたほうがいい」と感じることが、しっかりと言語化されている。非常に実践的な内容で、社内で共有するのにぴったりの一冊だと感じました。

「全社員に読ませたい!」――世界的ヒット「スイカゲーム」の開発者が惚れ込んだ“ビジネス書”とは?程涛(てい・とう)
issin代表取締役CEO
2008年、東京大学大学院情報理工学系研究科創造情報学専攻の修士課程在学中に、研究成果のpopIn(ポップイン)インターフェースを元に、東大のベンチャー向け投資ファンドの支援を受けて、popInを創業。2015年に中国検索大手のBaiduと経営統合、2017年に世界初の照明一体型3in1プロジェクター popIn Aladdin(ポップイン アラジン)を開発し、異例のヒット商品となった。2021年issinを創業、スマートバスマットを商品化。2022年、popIn代表を退任。

(本稿は、書籍『ベンチャーの作法』に関連した書き下ろしです。書籍では「なにがあっても結果を出す人の働き方」を多数紹介しています。)