『ばけばけ』第39回より 写真提供:NHK
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年半続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」連載です。本日は、第39回(2025年11月20日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)
トキは決していい女中とはいえないの「だが」
イライザ(シャーロット・ケイト・フォックス)にヘブン(トミー・バストウ)が手紙を書いている。
雇っている女中(トキ)はOKとノーしかしゃべらない。決していい女中とはいえないのだが……「だが」のあとは?
ヘブンは立ち上がってトキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)のもとへ。
「美しい」とつぶやく。
トキが? いや、たぶん、花が。
トキは、ユリをメインに、美しい花を生けていた。そういえば昔、彼女はタエ(北川景子)から武士の娘のたしなみを習っていた。その習い事がここに生きている。
「ブシムスメ スバラシイ」
「モウモウブシムスメネガイマス」
ヘブンは謎の言葉を発する。
「モウモウブシムスメ」とはどういう意味だろう。
トキはとある家を訪ねる。
しばらく間をおいて、家のなかに声をかける。
ふすまがゆっくり開いて、タエ(北川景子)が出てきた。トキのお金で家を借りることができたようだ。良かった。
タエはいつの間にか、お茶を出すこともできるようになっていた。
「これくらいは」「女中は居ないのです」と達観している。
そんなタエにトキは「花や茶の湯のお稽古をお願いできませんでしょうか」と頼み込む。
松江の女として、士族の女として、恥じぬたしなみを改めて身につけていかなくてはと理由を述べるが、つまり、「モウモウブシムスメネガイマス」は、MORE MORE(もっともっと)ブシムスメらしさを発揮してほしいという意味に解釈したのではないだろうか。
決していい女中とはいえないのだが、そのあとは武士の娘であるということだろう。その選ばれし者感をヘブンは買っているのだと思う。







