銃で脅される女性Photo:PIXTA

5月29日、埼玉県川口市でタクシー運転手が乗客に銃撃されるという衝撃的な事件が発生した。  タクシー運転手の男性は腹部に重傷を負ったが、幸いにも命に別条はないという。いざ銃を持った人間が目の前に現れたとき、 どのように対応すればいいのだろうか。銃撃から身を守るために「絶対にやってはいけないNG行動」と「九死に一生を得る初動」を紹介していく。命を守るためには、平時の備えが肝心だ。(防犯コンサルタント 松丸俊彦)

相手を知る
銃という武器の特性

 銃撃から身を守る、正確には死なずに生き残るための方法を伝えるうえで、まず考えなければいけないのは、銃という武器の特徴です。

 刃物と比較するとわかりやすいでしょう。銃は攻撃できる範囲が広く、殺傷能力も非常に高い。 加えて、貫通力も高いので攻撃を防ぎにくい武器です。 

 したがって、一言に銃撃と言っても、刃物に比べて多様なシチュエーションが生まれることになります。相手との距離や銃の種類、場所の閉鎖度合い、周りにいる人の数など、 結果を左右する変数を挙げればきりがありません。

 とりわけ重要なのが相手との「距離」です。例えば、最近あった事件を例に挙げると、5月29日に埼玉県川口市で発生したタクシー運転手銃撃事件では、タクシーという狭い空間で銃撃されたものの運転手は命に別状はありませんでした。一方で、3月にロシアで発生した「モスクワ銃乱射テロ」では、広いコンサートホールで約140人が亡くなりました。 

 銃撃の場合は相手との距離が遠くても命を落とす場合があります。しかし、一方で至近距離でも生き延びるためにできることもあるのです。今回の記事では、「至近距離」での銃撃に絞って「絶対にやってはいけない行動」と「九死に一生を得る初動」について解説します

思わずやってしまう
「命を落とすNG行動」

 銃撃の現場というのは、実際には集団パニックの状態なので、よほど慣れている軍人などではない限り冷静な判断ができなくなります。

 平時だったら「絶対にやらない」と思っていても、銃撃の現場で思わずNG行動をしてしまってもまったく不思議ではありません。あるいは、冷静に考えれば思いつくことも、銃撃の現場では咄嗟に思いつかないということだってありえます。

 例えば、銃を持った人間が目の前にいたとき、脇目を振らずに走って逃げるのはNGです。正しくは、脇目を振りながら逃げる。つまり、「犯人の様子を視界に入れながら逃げる」が正解になります。相手の行動や周囲の状況を常に把握しながら、対処することが、危機管理の鉄則となります。相手から目を離すのは危険です。

 この後に紹介する「命を守る行動」でも、視線の置き場はポイントとなってきます。

 犯人と戦うのもやめてください。実は条件次第では、戦うという手段を発動することもありえるのですが(後述)、ほとんどの場合で銃を持った人間と戦うべきではありません。無駄に命を落とすことにつながりかねないからです。

 同じく、犯人との対話や説得を試みることもNGです。映像作品で、こうした光景を見たことがある人も少なくないと思いますが、絶対にやめてください。犯人を刺激するリスクがあるからです。犯人とのコミュニケーションについては、正しい対応を後ほど紹介します。

 ここまで「命を落とすNG行動」を確認してきましたが、ここから先は「命を守るための行動」について次の観点から解説していきます。

・銃を持った相手が目の前に!視線の置き場を誤ると命を落とす
・犯人から話しかけられた!リアクションが生死を分ける
・絶体絶命!銃を発砲する人間から命を守る初動とは?
・犯人と戦っていい?抗戦の判断基準とは?