そして、私たちの体格や筋力、持久力などの運動能力と同様に、さまざまな生活習慣病の発症は、遺伝要因と環境要因がほぼ半々に影響をおよぼしていることをこの図は示しています。
ヒトゲノムの一部にみられる構造、つまりDNAの塩基配列のわずかな違いが、個人個人の違いを生み出しています。図1-20に示されているように、一塩基多型(SNP)は、DNAにおける塩基配列の個人差であり、多様性を表しています。

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たとえば、あるたんぱく質を規定する塩基配列の中で、AさんではGAG(グルタミン酸)であるのに、BさんではGAC(アスパラギン酸)であれば、その部分は異なるアミノ酸に置換されるのです。
個人間のゲノムを比較すると、300万~400万カ所もの異なる塩基配列が存在すると考えられています。それらの多様性の中で、ある集団において、違いが1%以下であれば「突然変異」といい、1%以上の割合で存在するものを「遺伝子多型」と呼んでいます。ほとんどの場合、SNPはそれぞれのたんぱく質の機能には影響をおよぼしませんが、なかには個人の疾患感受性に影響をおよぼすものが存在します。
実は遺伝リスクが高い
2型糖尿病
2型糖尿病は、複数の遺伝子と環境因子の組み合わせにより発症する多因子性疾患です。2型糖尿病は生活習慣病といわれているように、過食や運動不足などが原因であるとの認識が強い疾患といえます。
一方で、2型糖尿病の家族歴がある人の発症率は、その家族歴がない人の2~6倍であることが報告されていることから、その発症には遺伝的リスクが確実に存在していると考えられています。実際に、家族研究や双子研究により、2型糖尿病の遺伝率は40~60%であると推定されています。