2型糖尿病の遺伝子多型(リスクアレル)は全染色体(ゲノム)上に散在しており、それぞれが疾患発症におよぼす影響は小さいですが、リスクアレル保有数が増えるにしたがって、2型糖尿病の発症リスクは相加的に上昇することがわかっています(図1-21)。

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私たちは日本人において2型糖尿病と強く関連する遺伝子多型11個を用いて、遺伝的リスクスコア(GRS)を算出し、2型糖尿病に罹患(りかん)していない日本人男性を対象として、遺伝的リスクスコアと糖尿病の診断指標のひとつである血中のヘモグロビンA1c(HbA1c)濃度との関連を検討しました。その結果を、ここで紹介します。
東アジア人は肥満でなくても
2型糖尿病を発症しやすい
遺伝的リスクスコアは、各被験者のリスク保有数を足し合わせて算出し、3つに区分しました。また、心肺体力は体重当たりの最大酸素摂取量を基準として、低心肺体力群と高心肺体力群に二分しました。
その結果、心肺体力が高い人々は低い人々よりもHbA1c濃度は低い傾向があるものの、心肺体力レベルにかかわらず、2型糖尿病の遺伝的リスクが高いと、HbA1cの値も高くなっていました。この結果から、習慣的に運動を行い、心肺体力が高い人々においても、2型糖尿病に関連する遺伝的リスクは残ることが示唆されました(図1-22)。

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肥満によるインスリン抵抗性の増大、および膵臓(すいぞう)β細胞機能の低下によるインスリン分泌能の低下は、2型糖尿病の発症における主要な病態です。