「部下とのコミュニケーションがうまくいかない」「なんだかチームがワークしていない」「上司が何を考えているのかわからない」……あなたの職場はこんな悩みを抱えていないだろうか。今や多くの職場で“当たり前”となった1on1。2017年に発売されて以降ベストセラーとなった1on1の入門書『増補改訂版 ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法』(本間浩輔・著)は、ヤフーが実践してきた対話手法について、今日から実践できる内容が満載だ。本記事では、職場でありがちな悩みについて、著者の本間浩輔氏に伺った。

できる上司が最初に聞く「最強の4文字」。新入社員の心を開く突破口を人事のプロが解説Photo: Adobe Stock

Q 連休明けから新卒社員が配属されます。最初の1on1ではまず何から話せばよいですか?

 4月に入社した新入社員が、5月頃からいよいよ現場に配属されてきます。右も左もわからない状態の新卒に、1on1ではどんな話をすればいいのでしょうか。

A まずは「自己紹介」を入念に聞くことが突破口となる

 最初の1on1では、まず「自己紹介」をしてもらうことから始めることをおススメしています。上司として一方的に話すのではなく、部下の話を聞く姿勢を持つことが大切です。

 たとえば、「新人研修で印象に残ったこと」や「やってみて得意だと感じたこと」などを聞いてみると、その人なりの視点や強みが見えてきます。

 さらに「なぜそう思ったのか?」と掘り下げていくことで、部下にとっても、自分の経験を言語化する良い練習になります。

 言語化は、社会人の学びにおける重要なプロセスです。学生時代にはあまり求められてこなかったスキルですが、ビジネスの現場では言語化する力が欠かせません。

 新人にとっての1on1は、話を“聞いてもらう場”であると同時に、自分の言葉で語る“トレーニングの場”にもなるのです。

「プチ自慢」から会話の糸口をつかむ

 ある企業では、「新人にプチ自慢をしてもらう」というユニークな取り組みが行われていました。大げさな実績でなくて構いません。「その日一番早く出社した」「同期より早く研修課題を終えられた」など、ささやかなことで十分です。

「それなら話しやすいかも」と感じる若手社員も多く、話しやすさのハードルを下げるのに効果的です。

「プチ自慢」と聞くと「え?」と思われるかもしれません。ですが、「なぜそれが嬉しかったのか」「どういうところが得意だったのか」と問いを重ねていくことで、その人の価値観やモチベーションの源泉が自然と浮かび上がってくるのです。

たくさんの情報を得る

 Z世代、さとり世代、ゆとり世代など、私たちは新人にいろいろなラベルをつけてきました。これは言い換えると、自分達とは仕事に向かう意識や価値観が異なる、その戸惑いを表しているのかもしれません。

 ですが職場において、上司は部下との価値観の違いに戸惑っている暇はありません。部下を育成しならが、成果を出してもらう。リテンションも意識しなければなりません。その責任は上司側にあります。

 となると、部下に関する情報は多い方がいい。1on1は部下のためというけれど、上司にもメリットがあるのです。

 まずは、部下の話に興味をもつこと。自分に興味をもってもらうことを、不愉快に思う新入社員はいません。

 興味をもてば、部下に対する情報量も増えてきます。上司と部下の関係に限らず、職場でのトラブルの多くは「情報不足」と「勘違い」から始まります。

 教えることよりも、教えてもらうことが大切であると思ってください。