いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

【心が疲弊したら】いますぐできる「メンタル回復」の習慣・ベスト1Photo: Adobe Stock

魂を洗う旅への憧れ

 昔から、「本を持って旅に出る」ことに憧れている。

 旅館でもテントとハンモックでもいい。

 日常から離れてゆったりとした気分でページをめくりつつ、思索にふけるのだ。

 そこでは世間のニュースも目に入らない。SNSのトレンドなんて関係ない。面倒な人付き合いや、先週の失敗をどうリカバリーするかとか仕事の締切りに間に合うのかとか、気になるあれこれはこの際一切置いていく。

 ただ本を読み、考え、休む。

 どんなに魂が洗われるだろう。

 雑誌などで「旅と本」の特集を見かけることはよくあるが、そのたびに想像をして、「いいなぁ」と思う。

 だが実際はなかなかできない。

 小学生の息子たちと一緒に旅行をすれば本など読んでいる場合ではないし、独身のころも余裕がなく段取りが悪いために、ゆったりした気持ちで旅をするなどということができなかった。

 だからより一層、憧れの気持ちをつのらせている。

 ところがこのたび、「そんなこと言っているヤツは凡人」という厳しい言葉をいただいた。

 ローマ皇帝でありストア哲学者のマルクス・アウレリウスの言葉である。

毎日、「内省の習慣」をつくる

人は田舎や海辺、山に引きこもって静養したいと思うものだ。
あなたもそのような欲求を強く抱いている。
だがそれは、ごく凡庸であることの表れだ。
なにしろ人は、好きなときに自分自身のなかに引きこもることができるのだから。
自分の魂のなか以上に、静かに引きこもれる場所や、揉めごとから解放される場所はない。
……よって、そういう静養をつねに自分自身に与え、元気を取り戻すといい。
(マルクス・アウレリウス『自省録』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より

 考えてみると、わざわざ旅に行かなくても、自分の内側に潜ることで心を休ませることはできる。

 ジャーナリングをしたり読書をしたりなど、家事やスマホから離れて、内省の時間をとることはどこでもできる。

「旅に行けば魂が洗われるのになぁ」などと言っていないで、いますぐやりなさいということだろう。

 日常が慌ただしいのは、旅を夢見るばかりで心を休ませていないからかもしれない。リフレッシュを習慣にしたほうが、元気になり、余計な心配から解放されて慌ただしさもなくなり、好循環がつくれそうだ。

 その結果、本を持って旅に出ることも特別なことではなくなり、普通にできるようになりそうな気もする。

 自分の魂に潜るリフレッシュの習慣を取り入れてみようと思う。

(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)