
高島屋の不動産開発子会社の東神開発が、東京・足立の複合商業施設の開発から撤退する意向を固めたことがダイヤモンド編集部の取材で分かった。2026年の開業を目指して開発を進めてきたが、人件費や資材費といった工事費の高騰で計画断念に追い込まれた。足元では大型プロジェクトのとん挫も目立っており、人手不足やインフレが不動産業界に深刻な影を落としている。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)
東神開発が足立区・六町の事業から撤退へ
工事費の高騰で事業計画が大きく狂う
高島屋の不動産開発子会社の東神開発が、東京・足立の複合商業施設の開発から撤退する意向であることがダイヤモンド編集部の取材で明らかになった。
東神開発は1963年に設立した高島屋傘下のデベロッパーだ。玉川高島屋やシンガポール高島屋、日本橋高島屋に隣接したショッピングセンターを開発してきた。自社開発のショッピングセンターだけでなく、つくばエクスプレス(TX)沿線の流山おおたかの森駅前の「流山おおたかの森S・C」(2007年開業)を手掛けるなど、地域密着型の商業施設の開発にも強みを持つ。
撤退する意向が明らかになったのは、東京都足立区のTX六町駅前の区有地の開発事業だ。東神開発は23年7月、足立区と開発の基本協定書を締結。複合商業施設は、6階建てで商業フロアやレストラン、地域住民の交流を促すエリアなどが設けられる計画だった。当初計画では26年に開業予定で、新たな街のランドマークとなるはずだった。
東神開発が撤退する意向を固めた背景には、昨今の工事費高騰がある。人件費や資材費の上昇によって、計画断念に追い込まれたのだ。次ページでは、ダイヤモンド編集部の取材や公表資料などを基に、事業計画が大きく狂ってきた経緯などを明らかにしていく。