人手不足や建設費高騰を逆手に取り、ゼネコン各社は採算が確実に取れるプロジェクトを選ぶ「選別受注」を繰り出している。強気の選別受注によって業績が回復する建設業界には、久々にわが世の春が到来する見込みだ。しかし、業績悪化のリスクは、ゼネコン各社に付きまとっている。特集『総予測2025』の本稿では、わが世の春を謳歌するゼネコン各社に付きまとうリスクを解き明かす。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
選別受注で業績回復
久々にわが世の春が到来
不動産デベロッパーに対して、採算が確実に取れるプロジェクトを選ぶ「選別受注」を繰り出してきたゼネコン各社は2025年、業績を回復させて久々にわが世の春を謳歌するだろう。
24年は、売上高1兆円を超えるスーパーゼネコンで明暗が分かれた。東京五輪・パラリンピックや大型再開発などの建設ラッシュが一巡し、激しい受注競争の末に19年ごろに獲得した“爆弾案件”を新型コロナウイルス禍や資材高が襲い、採算が悪化したためである。
清水建設は24年3月期、1961年に上場して以来、初めて営業赤字に陥った。“赤字受注”といわれた大型プロジェクト「麻布台ヒルズ」では、資材高と労務費の高騰が直撃し、恐れていた通りに巨額赤字を計上したことが響いた。大成建設も、爆弾案件と呼ばれた世田谷区の本庁舎建て替え工事で大幅な工期遅延が発生し、200億円を超える営業減益を余儀なくされた。
ただ爆弾案件を消化し終えた清水建設をはじめ各社は、25年3月期から26年3月期にかけて、コロナ禍以降で徹底した選別受注によって獲得した案件が好業績に貢献する見通しだ。24年度に始まった働き方改革に伴う残業時間の上限規制も盾に取り、ゼネコン各社はデベロッパーに対して選別受注を続けている。
このため25年は、建設ラッシュの中で選別受注を徹底し過去最高益を更新した17~19年度以来となるわが世の春を迎える公算が大きい。そして、デベロッパーよりゼネコンの立場が強い「ゼネコンのターン」が当面続くとみられる。
次ページでは、わが世の春を謳歌するゼネコン各社に付きまとうリスクの正体を解き明かす。そのリスクをコントロールできなければ、ゼネコンは自らの首を絞めることとなり、今後の業績を悪化させるだろう。