琴子の告白
「猫かぶっちゅうと疲れるわー」
楚々として、気が利いて、朝、早く来て皆にコーヒーを入れるような琴子が、カストリ酒をぐびぐびと飲む。まるで別人。「猫かぶっちゅうと疲れるわー」とのぶに告白する。なぜ猫をかぶっているのか。
結婚相手を探すためにエリートが多そうな新聞社に入社したちゃっかり者であった。
女学校を出てから花嫁修業していたが戦争で男性が少なくなってしまいあてが外れた。27歳は「立派な行き遅れや」と焦っていると明かす琴子。昭和21年(1946年)ではそういう認識だったようだ。
琴子にのぶは「結婚はもうせんと思う」と言う。のぶが夫を亡くしていると聞いて、涙する琴子。でも、すでに嵩(北村匠海)と結婚することが視聴者にはわかっているので、いやいや、と思ってしまう。知らずにハラハラして見ている視聴者はいるのだろうか。そんな奇特なまっさらでドラマを見ている人がいたらいいなあ。
この琴子。2021年に放送された朝ドラ『おかえりモネ』で今田美桜が演じていた役の設定と少し似ている。主人公・百音(清原果耶)が地元から東京に就職したとき、気象予報士としてすでに活躍していたのが今田が演じる神野マリアンナ莉子。報道にいくステップとして気象予報士をやっている。職場では楚々としているが、職場を離れると口が悪いという、琴子と同じく猫をかぶっている要領のいい人物であった。
ただし、その二面性が琴子もマリアンナもいやな感じではなく、場所をわきまえることで、波風を立てないようにする知性なのだ。
この手の同僚は以前だったら主人公とライバル関係になり、意地悪するようなことが少なくなかったが、『モネ』の頃から、そういうギスギスした展開がなくなっている。今回も、猫の手要員ののぶ、猫かぶりの琴子。猫つながりで、仲良くやっていくに違いない。